クルーズ100万人時代をつくろう  第2次ブームを成長につなげるために

2019.11.18 00:00

(C)iStock.com/welcomia

日本のクルーズ人口は3年連続で過去最高を更新し、32万人を超えた。しかし、増加率の鈍化や売り手側の知識が追いついていないといった課題も見える。今後、クルーズ50万人時代への扉を開き、100万人実現を視野に入れるためには何が必要なのだろうか。

 日本のクルーズ人口は16年の24万8100人以降、17年31万5300人、18年32万1100人と3年連続で過去最高を更新した。原動力となっているのは日本発着の外航クルーズの増加だ。外国船社が運航するクルーズ船の日本寄港回数は16年が49.5%増、17年が39.5%増と急増。18年は55%減となったものの1913回と3年間で1.3倍に増大している。その結果、外国船社による外航クルーズの日本人乗客数も急増。16年16.6%増、17年30.0%増と推移し、18年は9.9%増の20万6100人となった。クルーズ人口全体に占めるシェアは10年前の43.7%から64.2%に約20ポイントも拡大している。

 契機となったのは、13年にスタートしたプリンセス・クルーズによる日本発着の外航クルーズだ。この人気の波に乗り、市場が活性化。クルーズ元年といわれた1989年に15万人台だった人口は、27年間にわたって15万~24万人の間で増減を繰り返してきたが、17年に初めて30万人の大台を突破することになった。

 クルーズ関係者の間では、最近の好調さが元年以来の第2次クルーズブーム到来につながるとの期待感が広がる。6月に日本外航客船協会(JOPA)の会長に就任した郵船クルーズの坂本深代表取締役社長は、就任挨拶で「ここ数年の伸びを見ると、第2のクルーズ元年を迎えたといってもよいのではないか」との認識を示しただけでなく、日本人のクルーズ市場が人口の0.25%に過ぎない事実を挙げ、「成長の余地はまだ十分にある」と述べた。クルーズ専売の旅行会社であるクルーズプラネットの小林敦代表取締役社長も日本市場の伸びしろは十分にあるとの認識で、7月の商品発表会見では「24年には日本人のクルーズ人口を100万人に拡大できるのではないか」と述べ、今後の急成長の可能性を指摘した。

 市場の拡大基調を受け、旅行会社も商品造成や販売を積極的に強化している。阪急交通社は全国各支店でクルーズ商品の企画・販売を行うが、17年1月に大阪・梅田でクルーズ旅行専門カウンター「クルーズセンター」を設置し、より専門的なニーズへの対応を強化。さらに今年5月には東京・新橋に「阪急クルーズサロン」を開設し、クルーズに関する相談に幅広く対応できる体制を整えた。クルーズプラネットも日本発着の外航クルーズの増加に対応する目的で日本発着ツアーセンターを拡張し、専任スタッフによる相談業務を強化している。

 全社を挙げて取り組む姿勢は特に旅行大手で明確になっている。JTBは18年4月のグループ会社再編に伴い、旧グループ各社のクルーズ商品造成機能を一本化。その後、全国のクルーズ事業を統括する組織としてクルーズ部を独立させ、事業の底上げを図っている。18年からクルーズに本腰を入れたHISは19年の売上高と送客数で前年比5~6割増を目標に掲げる。強化策の1つがチャーターで、クルーズプラネット、ベストワンドットコムとの3社合同により、20年のゴールデンウイークに「MSCベリッシマ」のチャータークルーズを実施する。イタリアのMSCクルーズが保有する同船は今年3月に建造されたばかりの最新鋭船。総トン数は17万トンを超え乗客定員は5686人。旅行会社がこれだけ超大型の最新鋭船をチャーターすること自体が日本のクルーズ市場の勢いを感じさせるものだ。

客室は海外市場との争奪戦

 とはいえ、日本のクルーズ市場をさらに拡大していくには課題も多い。外航クルーズの好調の陰で、クルーズ元年前後に活躍した日本のクルーズ客船が徐々に売却・引退していった影響もあり、国内クルーズの日本人乗客数は近年伸び悩み、18年も1.1%増にとどまった。

 頼みの綱の外航クルーズには、世界市場と日本市場の予約タイミングのギャップが立ちはだかる。クルーズ人気は世界的に高く、予約の早期化が進行し、予約タイミングが遅い日本市場にとっては客室確保の難易度が上昇しているからだ。

【続きは週刊トラベルジャーナル19年11月18日号で】