国際観光旅客税の使い道 高まる使途拡大の声

2024.03.11 00:00

(C)iStock.com/MicroStockHub

国際観光旅客税の使途拡大を求める声が上がっている。日本観光振興協会はDMOへの支援強化を通じた地域の観光振興への活用を求める提言を行い、JATA(日本旅行業協会)は海外旅行復活への支援強化にも税収を割くべきだと主張する。国際観光旅客税は今後、どのように使われるべきなのか。

 日本観光振興協会は2月8日、国土交通相宛ての提言「観光の価値向上と持続可能な観光産業に向けて」を観光庁に届けた。日観振の最明仁理事長と、提言とりまとめに協力したJATAの蝦名邦晴理事長が同庁を訪問し、髙橋一郎長官に直接提言書を手渡した。

 9つの柱から成る提言の内容は、観光産業にかかわる課題解決を図るとともに、観光が果たすべき役割を強化し、観光のプレゼンスを確固たるものにすることを目的にまとめられており、その内容は1月16日の観光立国推進協議会(日観振主催)で承認された。この提言の中で、複数回にわたって言及されているのが、国際観光旅客税の活用だ。旅客税は観光先進国実現へ基盤を強化するための財源確保を目的に、19年に導入された。外国人のみならず日本人も対象で、出国1回につき1000円を航空券代などに上乗せして徴収している。

 提言ではまず、「地域の安定的な財政運営に必要な財源の確保・充実」の項目で、「全国的にもDMOは財源不足という問題を抱えており、DMOの機能向上、人材育成および人材獲得のためにも国際観光旅客税の税収を活かせる策を講じることが必要」と訴えている。

 この狙いについて、日観振の最明理事長は、「旅行需要が有名観光地に集中する傾向が現実としてあり、そうでない地域に対して、ある程度周りが助ける必要性はやはりある」と前提となる考え方を説明する。地域の観光振興の司令塔たるべきDMOだが、まだまだ自前の稼ぎで活動できる事例は多くない。ならば、400億円を超える国際観光旅客税の財源を「地域の観光振興に当たるDMOの運営に係る原資として使えないか」という問いかけが、提言には込められている。

 もちろん、DMO側の自助努力は必須だし、一度決まると既得権となってしまいがちな公的予算の硬直性は解決すべき課題だとしても、「国の登録制度に基づくDMOなのだから、せめて人件費の1人、2人分を税財源から出してもよいのでは」と最明理事長は訴える。

 最近では宿泊税を導入する自治体が増えており、DMOの財源の一部に活用するアイデアもあるが、すべての自治体が宿泊税を導入するのは難しい。地域間の競争環境を考えると、宿泊税が誘客の競争力にマイナスの影響を及ぼすと考え二の足を踏む地域も多い。日観振は、大半の自治体が導入検討の入り口にも立てていないのが現状で、多くの自治体が宿泊税を導入するまでにはまだまだ時間が必要だと見ている。

税額の改定にも踏み込み

 DMOの財源に税収を当てる場合には、各DMOへの配分の妥当性が難問となる。そこで日観振は解決策としてビッグデータの活用を挙げる。ビッグデータを使って国際観光旅客税を地域に適正配分するというものだ。

 訪日旅行者の移動や動態などのビッグデータを活用すれば、観光客が滞在した時間を割り出せる。それに応じて適切に財源を分配することも可能になるかもしれない。国際観光旅客税の増減分が各地域の歳入増減に直結すればインセンティブとして機能し、観光への地域の意識が高まることにつながる。地域は持続的発展の観光のために必要である来訪者からの財源を得つつ、新たなテクノロジーを活用することでさまざまな負担を省きながら、効果的な観光地域づくりが実践できるのではないか、というのが日観振の見立てだ。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年3月11日号で】

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