大阪万博を商機に 地方への動線をどう描くか

2024.04.15 00:00

(C)iStock.com/shih-wei

大阪・関西万博開幕まで1年。大阪では55年ぶりとなる万博の開催期間中に見込まれる来場者数は延べ約2800万人となる。このうち海外からは350万人を想定。大阪以外の都道府県にも万博による観光需要創出の効果が期待される。ツーリズム産業はこのチャンスをどのように商機に結びつけることができるのだろうか。

 「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げる大阪・関西万博が来年4月13日に開幕し、10月13日までの184日間にわたり「未来社会の実験場」をコンセプトとする各種展示やイベントが行われる。日本では1970年の大阪万博、2005年の愛知万博に続き3回目の大規模博覧会(かつて「一般博覧会」として区分されていた最大規模の博覧会。現在は「登録博覧会」に区分される)となる。開催期間中の延べ来場者数は、日本初の大規模博覧会として高度経済成長期に開催された1970年大阪万博の6400万人には及ばないまでも、愛知万博の2205万人を大きく上回る目標を掲げている。

 20年12月に策定された「2025年日本国際博覧会(略称『大阪・関西万博』)基本計画」は想定来場者数を約2820万人と定めた。この基本計画を受けて日本国際博覧会協会が策定した「大阪・関西万博来場者輸送具体方針」によれば、来場者総数の約2820万人のうち、国内来場者を約9割、海外来場者数を約1割と見積もっており、国内来場者は約2470万人(88%)、海外来場者数は約350万人(12%)と想定されている。

 日本では20年ぶりとなる大規模博覧会であり、経済波及効果への期待は大きい。アジア太平洋研究所は万博関連事業費が7275億円、消費支出が8913億円と想定。これを基に経済波及効果を試算している。それによると基準ケース(夢洲会場のみでの発生として試算)の場合、万博関連事業費の生産誘発額が1兆4102億円、消費支出の生産誘発額が1兆3355億円で合計2兆7457億円の経済波及効果があると見積もられる。このほか粗付加価値誘発額や雇用者所得誘発額も含めれば5兆円以上の経済波及効果を期待できるという試算内容になっている。

 いずれにせよ大阪・関西万博は3000万人に迫る規模で人の移動が創出され、数兆円の経済波及効果が望める巨大イベントであり、観光産業にとっては数十年に一度のビッグチャンスであるということは間違いない。

 ただし心配されるのは、開幕が1年後に迫った現在も大阪・関西万博が盛り上がりに欠けることだ。三菱総合研究所は定期的に大阪・関西万博への関心・来場意向を全国的に調査しているが、昨年10月に実施した最新調査では関心・来場意向のいずれもこれまでより低下してしまった。関心度(「大いに関心がある」「まあ関心がある」を選択した人の割合)について、全国では前回調査(23年4月)の31.5%から27.4%へ4.1ポイント低下した。地域別に見ると、お膝元の京阪神圏で低下が顕著で47.9%から40.1%へ7.8ポイントも低下した。また中京圏でも33.7%から26.2%へ7.5ポイント低下してしまった。

 来場意向(万博会場へ「行きたい」を選択した人の割合)も低下した。全国では22年10月調査を境に2回連続で低下しており、前回との比較では30.9%から26.9%へ4.0ポイントの低下だ。地域別では京阪神圏や首都圏も2回連続の低下。京阪神圏は7.9ポイント落ちて39.3%、首都圏は4.0ポイント落ちて22.3%となった。

 盛り上がりに欠ける世情を反映してか、観光・旅行業界からも大阪・関西万博への取り組みに対する熱量が感じられない。JATA(日本旅行業協会)は観光関連企業・団体や自治体・DMO等を対象に、大阪・関西万博とインバウンド旅行客受け入れ拡大に関する意識調査を実施しているが、万博を機にインバウンド旅行客の誘致を検討しているとの回答は3割台にとどまる。しかも前回調査(23年7月1日時点)より最新調査(24年1月1日時点)の方が下回る。今回は「これから考えてみたい」18%(前回20%)、「そう考えている」31%(同32%)の計49%で前回(計52%)より3ポイント落ち込んだ。関西に拠点がある旅行会社ではさらに落ち込みが顕著で、「そう考えている」が61%から54%へ7ポイントの下落だ。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年4月15日号で】

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