北陸復興とツーリズム いま何が求められるのか

2024.04.01 00:00

(C)EitoMars

元旦の北陸地方を襲った能登半島地震。石川県北部を中心に宿泊業を中心とする観光業にも甚大な被害を与えた。また、直接的な被害の大小にかかわらず北陸全体を風評被害の暗い影が覆う。北陸の観光復興へいま、ツーリズムに何が求められているのか。

 能登半島地震では石川県の人気観光地である輪島市が最大震度7の激震に襲われ、有名な和倉温泉がある七尾市も震度6強の烈震に見舞われた。その揺れは金沢市や小松市といった石川県の主要都市はもちろん、富山県や福井県でも震度5を記録し、北陸全体に深刻なダメージを与えた。新潟県でも最大震度6弱が観測され、震度5強以上だったエリアの広さは富山や福井を上回った。その結果、日本海側の広い地域で観光産業は甚大な被害を受けることになった。

 国土交通省(3月12日時点)によると、石川県内では宿泊施設88軒で全壊・半壊・一部損傷の被害があり、最も被害件数の多かったのが七尾市の23軒。富山県では63軒でエレベーターが停止する等の被害があり、福井県あわら市の宿泊施設4軒でボイラー破損等の被害が確認されている。新潟県では54軒の宿泊施設で配管が損傷。石川・富山・新潟の3県で合計100軒の宿泊施設からガラス破損等の被害報告があった。

 事態が深刻なのは、施設の被害や電気・水道等のインフラの崩壊により物理的に営業ができなくなってしまったこれらの宿泊施設にとどまらない。自然災害につきものの、いわゆる風評被害も極めて深刻だ。

 石川県では1月初旬までの損失は県全体で5億円とも6億円ともいわれている。その後も各地で休業状態が続いていることを考えると被害がどこまで膨らむのか想像がつかない。

 富山県によれば富山市の約7600人を最多として、黒部市・高岡市・氷見市で2400~4800人のキャンセルが発生し、1月10日時点で合計2万1372人分2億9643万円の損失が生じている。

 福井県では杉本達治知事が1月の会見で「旅行業者やホテル、旅館の話では年明け3割近くキャンセルが出たと聞いている」と状況を報告。2月の会見では「1月中に約4万人分のキャンセルがあり、13億4000万円ほどの被害があった」と数字を挙げた。

 新潟県では宿泊施設の1月末までのキャンセルが約9000件、人数にして2万5000人以上とされ、1人1泊平均1万5000円として推計すれば約3億8000万円の被害額となる。

 岸田文雄首相は1月25日の会見で、北陸4県の風評被害について「通常通りの営業が可能な地域でも予約のキャンセルが相次いでいる。4県における1月中のキャンセル数は約17万件に上る」と状況を説明。1件平均2人の予約と仮定し、1件当たりの宿泊代金を3万円とすれば51億円の風評被害と見積もることができる。

 ちなみに今回の震災ではインバウンドへの風評被害の影響はほぼなかった。観光庁の髙橋一郎長官は1月17日の会見で「日本への渡航を控えるべきといった注意喚起や渡航制限を行っている国・地域はない。日本政府観光局(JNTO)を通じて重点22市場について海外旅行会社へ聞き取りなどを行ったが、東アジア・東南アジアで若干のキャンセルがあったものの、アジアや欧米に震災が大きく話題になっている市場はない」と答えている。

4県へ94億円余りを支援

 政府は2月、能登半島地震からの北陸地域の復興に向けて「被災者の生活と生業支援のためのパッケージ」をまとめた。同パッケージの予算総額1553億円から観光産業復興のために予算を割いて実施しているのが北陸応援割だ。石川、富山、福井、新潟の4県にすでに94億4000万円を交付済みで、各県がこの予算を活用した北陸応援割を実施している。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年4月1日号で】

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