乱立するエコラベル どうする持続可能な観光の認証取得

2024.04.08 00:00

(C)iStock.com/aprott

環境、社会、経済への影響に配慮した持続可能な観光は、観光関連事業者や地域関係者にとって、もはや必須要件だ。責任の果たし方を証明する方法にエコラベル認証があり、取得を模索する事業者は増えている。ところが、需要の高まりはエコラベルの乱立を招き、憂慮した国際組織が動いた。

 社会全体で持続可能性への意識が高まり、サステナブルツーリズムは観光の大前提となっている。観光客は宿泊施設やデスティネーション(目的地)を選択する際の評価軸に持続可能性を取り入れる傾向を強めている。世界の旅行者を対象に行ったブッキング・ドットコムの調査によると、「よりサステナブルに旅行したい」との回答が76%を占め、エクスペディアの調査でも、90%がサステナブルな選択肢を求めていると報告されている。もはやサステナブルであることは、観光関連事業者にとってはビジネスそのもの。配慮が不十分だとみなされれば、商取引に影響が生じることはおろか、市場から退場を余儀なくされる可能性も否定できない。

 そうした事情を背景に、持続可能な観光への取り組みの証しとなる認証ラベル、いわゆるエコラベルの存在が重要度を増している。これに伴い、エコラベルをお墨付きとして活用したい事業者のために、認証を与える団体の数も増大してきた。

 振り返れば、2000年代にすでにエコラベルの乱立は世界的に問題となっており、どの認証ラベルが適切かを判断することが難しい状況だった。そこで国連が動き、国連世界観光機関(UNWTO〔現UNツーリズム〕)や国連財団などを中心に、観光関連団体や環境保護関連団体が参加するグローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(GSTC)が07年に発足。08年には国際基準であるGSTCクライテリア(基準)を策定した。基準としては、宿泊施設や旅行会社を対象とした「観光事業者向け基準」と、公共政策立案者やDMOが対象の「観光地域向け基準」の2種類が用意された。

 基準策定に当たっては、観光業界と持続可能性の専門家など2000人以上が協議し、当時世界中で実施されていた4500以上の基準を分析。それを踏まえて基準案をつくり、観光産業のリーダーや自然保護活動家、政府当局者、国連機関などを含む8万人以上のコメントを集約し、15カ月以上をかけて内容をまとめた。こうした入念なプロセスを経て策定された国際基準として、GSTCクライテリアは多くの認証ラベルの中から適切なものを選択する際の判断基準として信頼を得ることとなった。同時に認証ラベルの乱立を防ぐことにもつながったわけだ。ただ、時を経て、この仕組みにも問題が浮上してきた。

なんちゃって認証の出現

 GSTCがこれまで各種エコラベルに与えてきた承認は、あくまでも認証機関側が用意した基準に対して。GSTCクライテリアは、①持続可能な管理(持続可能なデスティネーション・マネジメントを実践)、②社会(地域社会への経済的便益を最大化し、負の影響を最小化)、③文化・コミュニティー(地域社会、観光客、文化への恩恵を最大化し、負の影響を最小化)、④環境(環境への恩恵を最大化し、負の影響を最小化)を4本柱とし、それぞれにひもづく基準カテゴリーが示されているにすぎない。その基準を審査するための方法や数値設定は各認証機関が考え、その内容をGSTCが承認する形だ。

 このため、承認を受けた基準を有する認証機関は自らが行う認証(Certification)が間接的にGSTCのお墨付きを得たものだと主張できる。それによってGSTCのお墨付きをうたう認証機関が増大し、なかには数時間の審査だけで認証したり、1回認証した後は更新も年次審査もしっかり実施していないところも現れた。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年4月8日号で】

関連キーワード