DMO制度のこれから 課題多き地域の司令塔づくり

2024.03.18 00:00

(C)IStock.com/mrPliskin

観光庁が観光地域づくり法人(DMO)の機能強化に向けて動き出した。日本の観光のさらなる活性化の前提となる地方部への誘客にDMOの機能強化が欠かせないことや、地域の司令塔として必ずしも効果的に活動できていない現状が背景にある。課題多き司令塔のこれからについて考える。

 「DMOは日本の観光がどこまで伸びていくかの鍵を握る大変重要な存在だ」。そう言い切ったのは観光庁の髙橋一郎長官だ。2月21日の定例会見でDMOの機能強化に関する質問に対して、こう切り出した。これに先立ち2月6日に開催された全国DMO会議ではその重要さの理由についても言及。「地方部にこそ、まだ生かされていない限りなきポテンシャルがあり、インバウンドはまだまだ伸びる。豊かな自然、文化、歴史を有する地方部に大きな流れを呼び込んでいくことがわれわれの最大の仕事であり、日本の観光の重要な課題でもある。その地方部への誘致を担うのがDMOだ」とし、インバウンドの地方誘客の成否がDMOの活躍いかんにかかっていることを強調した。

 髙橋長官が地方部に大きく期待するのは、日本のインバウンドが順調に回復する一方で、一部都市圏への需要集中が顕著になっているからだ。23年のインバウンドは急速に回復し、訪日外国人旅行者が年間2500万人を突破。コロナ前19年比では78.6%の回復となり、12月の訪日外国人旅行者数は273万4000人と19年同月と比べ108.2%。単月では3カ月連続でコロナ前を上回っている。

 ところが宿泊先地域には偏在傾向が見られ、23年11月の外国人延べ宿泊者数は3大都市圏だけで72.4%を占めた。19年11月は66.5%だったので偏在傾向が強まった格好だ。コロナ禍が沈静化して久々に日本を訪れた旅行者が、東京、大阪、京都といったメインどころの観光地からあらためて訪日旅行の記憶をたどり直したとも考えられる。とはいえ、コロナ前も後も極端な偏在が存在しているということに変わりがない。

 23年3月に閣議決定した観光立国推進基本計画は3つのキーワードの1つに「地方誘客促進」を挙げており、観光庁としても地方誘客は必達目標の1つだ。地方部への誘客を担うDMOの機能強化は目標達成に欠かせない取り組みといえる。

 機能を強化したDMOに求める姿として観光庁の髙橋長官が全国DMO会議で説明したポイントが4つある。第1がDMOの最大の役割として多様な関係者間で調整し合意形成を通じ地域をマネジメントすること。地域の戦略の策定と実行の中心となり成果を上げることだ。第2がインバウンド受け入れの基盤となる環境を整えること。ネイティブチェックによる正しい外国語による多言語化や、キャッシュレス決済、Wi-Fiなど当然あるべき受け入れ環境の整備だ。

 第3が関係者と連携した効果的なプロモーションの展開。日本政府観光局(JNTO)、広域連携DMOなどとの連携により効果を最大化するプロモーションが求められる。第4が地域にある魅力に見合った値付けと観光地経営を行い、価値に見合った収益を地域に還元し、必要な投資や人材育成を進め、地域の価値を次世代に継承。将来にわたり持続可能な観光を実現することだ。

 こうした期待に応え得るDMO実現のため、観光庁はDMOの機能強化に関する有識者会議を設置。1月18日に第1回会議を開催した。

登録要件見直しも検討

 取り組みの方向性として観光庁が有識者会議に示した3本柱の案は次のようなものだ。

 まず「インバウンド地方誘客を支えるDMOの早期育成」は、観光立国推進基本計画に位置付けられる「世界的なDMO」の候補となる「先駆的DMO」を、インバウンド誘客の強化やオーバーツーリズムの未然防止等に取り組むDMOとして捉え、そこで求められる機能を検討する。喫緊の課題である地方誘客強化やオーバーツーリズム対策に急ぎ対応していくことが必要だからだ。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年3月18日号で】

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