拝啓新入社員殿 未来図をどう描きますか

2024.04.29 00:00

(C)iStock.com/FotografiaBasica

人材獲得競争が激化するなか、観光産業を選択した新入社員たちの思いも、彼らに未来を託す観光関連事業者の思いも、例年に増して熱いはずだ。観光産業のリーダーからのメッセージには、ツーリズム新時代を共に歩んでいく仲間たちへの大きな期待がにじむ。

 3年連続で採用ゼロだった観光関連企業も出るなど採用に多大な影響を及ぼしたコロナ禍が沈静化。その結果、企業の採用意欲は2年連続で安定し、採用の最前線では激しい人材獲得競争が始まっている。日本社会が抱える人手不足という構造的問題を背景に、優れた人材の確保は観光産業の行く末を左右する最重要課題となっている。

 トラベルジャーナルは観光産業の主要企業を対象に採用状況を尋ねるアンケートを実施。24年4月の採用状況と25年4月の採用計画について、18社(旅行7社、航空3社、鉄道3社、ホテル5社)から回答を得た。それによると18社中16社が採用人数を増やしている。しかも増加幅が大きいのが特徴だ。特に旅行会社や航空会社の増加ぶりが目立つ。旅行会社は23年4月の採用が7社計622人だったが24年4月採用は1329人に増大。航空会社も430人が910人に増えた。このほかホテルは5社計で40%増、鉄道も3社計で36%増となった。

 採用を強化する企業が増える一方、採用を手控えたり規模を縮小した“冬の時代”の後遺症を自覚する企業も少なくない。特に人員削減の一環として新規採用を控えざるを得なかった旅行会社は、採用強化に当たり苦労が多い。旅行会社からは24年採用について「一時的に採用を凍結していたため、学生への周知が十分に行えず、一次募集のみでは合格者が採用予定数に届かなかった」や、3年ぶりの採用活動でノウハウが十分でなく「母集団の形成がうまく図れず、結果として想定人数を採用できなかった」との振り返りもあった。別の旅行会社は「業界への不安を持ちながら応募してくる学生が多く、業界や会社の現状について丁寧に説明しながら採用を進めた」としている。

 エイチ・アイ・エス(HIS)も約3年ぶりの新卒採用再開とあって選考が少し遅れてスタートした結果、「学生からのエントリー数の形成に苦労した」とする。一方でコロナ禍でも採用を継続してきた東武トップツアーズは「継続した採用実績に加え、初任給引き上げ等を行うことで、想定通りの人数を採用できた」と安堵する。

 業種を超えて課題となるのが採用活動早期化への対応だ。日本航空は「実質的な採用時期の早期化が進んでいる点に苦労した」、日本旅行も「年々業界選びや企業選びの時期が早まり、3月1日情報解禁のタイミングでは多くの方が入社したい会社が決まっている状態に対応しなくては」としている。アパホテルは今後について「就職活動の『超早期化』がさらに進む」と予想する。

 このほか採用環境について「地方の学生は以前と違い他県へ出たがらず県内での就職を希望する傾向が強く、これまで同様に一定数採用するのが難しい」(日本ホテル)との課題も指摘された。

インターンシップに活路

 全体的に採用環境が厳しさを増すなか、各社とも人材確保に工夫に凝らす。最も多かったのがインターンシップの積極活用だ。JTBは24年採用に当たり「1Day仕事体験」を長期実施。約5000人の学生が参加してJTBについて知る機会を提供できたとし、「早期化・長期化が進むなかで、よりインターンシップの重要性を感じる」という。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年4月29日号で】

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