クルマ離れが変える旅 免許保有率低下のなかで

2022.05.23 00:00

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クルマが若者の「三種の神器」から外れて久しい。マイカーはおろか運転免許証さえ持たない若者もいまでは珍しくなくなった。そんな若者のクルマ離れは、レンタカー利用へのハードルにもつながり、観光のスタイルや観光地への影響が指摘されている。

 沖縄振興開発金融公庫が公益財団法人日本交通公社に委託して実施した「ポストコロナ時代における沖縄観光のあり方に関する調査研究」で、これからの旅行市場を牽引する10~30代のクルマ離れが顕著で、レンタカー利用にも大きな影響を及ぼしている実態が明らかになった。

 調査研究の一環として実施した「これからの旅行牽引世代の旅行全般や沖縄観光に関する意向調査」によれば、「レンタカーの運転に抵抗はない」割合は40歳以上では免許所持者の53.8%に達しているのに対し、ミレニアル・Z世代(10代後半~30代)では37.7%にとどまっている。このうちミレニアル世代(20代中盤~30代)は43.4%と40歳以上と10ポイント程度の差にとどまるが、10代~20代中盤のZ世代だけを取り上げるとレンタカーに抵抗感がない割合は免許所持者の28.1%まで低下する。さらに付け加えれば、「運転免許を持っておらず、レンタカーを利用することはない」との回答も31.6%に達している。ちなみに同質問の40歳以上の回答は5.8%にとどまる。この結果を見る限り、レンタカー旅行が今後逆風にさらされることは容易に想像できるだろう。

 警察庁の運転免許統計によると、運転免許証の保有者数は統計開始の1966年から増え続けてきたが、19年に初めて減少し20年も2年連続の減少となった。また、19年度末と20年度末を比較すると全年齢では0.2%の減少だが、16~19歳では1.3%減、20~24歳は0.2%減、25~29歳は0.7%減といずれも全体平均以上の減少率で、若者世代の運転免許所有者の減少が目立つ。クルマへの関心の低下や人口減少などを鑑みると、今後、運転免許証の保有者数が反転していくとは考えづらいと言わざるを得ない。

 調査ではクルマ離れと沖縄旅行との関係についても調べている。それによると「沖縄旅行をしていない理由」を世代別に尋ねたところ、各世代とも「移動時間が長い」「交通費が高い」を挙げた割合が約4~5割と高い点が共通していた。しかし、「沖縄県内の交通が不便」は40歳以上8.5%に対しミレニアル・Z世代で13.9%、「レンタカー利用に抵抗がある・運転が苦手」は40歳以上2.1%に対しミレニアル・Z世代では4.8%となり、いずれも高い傾向にあった。

 移動に関する価値観を問う質問として、「旅行先の移動についてよい、便利だと思うこと」を世代別に尋ねた結果、「3密回避」や「安心」「安全性」「快適」「衛生面」を挙げた回答は40歳以上の方が多かった。これに対して、ミレニアル・Z世代では「他者運転(他者に運転してもらい楽に移動したい)」を挙げる回答が「大変あてはまる」と「やや当てはまる」で合計58.6%と、40歳以上の53.0%より多かった。

 同調査では、観光目的での沖縄旅行意向について運転免許証の保有とレンタカーに対する意識の関係を見た場合、「レンタカーを運転することに抵抗がない、もしくは同行者が運転してくれる場合で旅行意向が高く、レンタカーへの抵抗があったり運転免許証を持っていない場合に旅行意向は低い傾向にある」と結果をまとめている。

クルマに依存しない移動を提言

 こうした結果を踏まえて取りまとめた「今後の沖縄観光・観光地としてのあり方についての提言」では、クルマ離れがミレニアル・Z世代の沖縄旅行意向の低下を招いているとして、「車(レンタカー)に依存しないで移動できる交通体系の構築」や「観光地・観光施設側からの、車を利用しない観光客向けのアクセス方法の発信」を提言している。

【続きは週刊トラベルジャーナル22年5月23日号で】