人気底堅いハワイ、ホノルル好調も隣島の底上げ急務

2019.09.30 01:00

日本人がまばらなハワイ島。カイルア・コナ

就航前から注目を集めた全日空(NH)の超大型旅客機 A380 が 5 月に運航を開始し、すでに 2 機目も投入された話題のハワイ方面。人気は根強く、年末年始商戦も熱を帯びてきた。 ただ、ここへ来て需要は伸び悩み気味で、主要因のハワイ島のてこ入れが急務となっている。

 全日空(NH)のホノルル・北米線は4月の旅客数が前年同月比0.4%減で座席利用率も71.3%にとどまっていたが、ホノルル線にA380を週3便で投入した5月には旅客数が5.9%増、利用率も6.1ポイント上昇して77.4%となった。5月24日の就航だったため、本格的に効果が表れた6月は旅客数の伸びは6.7%に拡大し、利用率も84.1%まで上昇した。さらに7月1日からは2機目の投入で週10便に便数を増やした。その結果、7月の旅客数は11.7%増え、利用率も82.3%を確保した。

 旅行会社もA380投入を好機と捉えて積極的に座席を利用している。エイチ・アイ・エス(HIS)は、A380効果により同社の7〜 9月の NH利用が前年同期比で約2.3倍となり、ホノルル旅行での NHのシェアが高まっているという。

 NHは閑散期の需要喚起にも積極的に取り組んでいく方針で、11月に「ANAホノルル・ミュージック・ウィーク」の開催を予定。新たな音楽フェスティバルで旅行需要を喚起するのが目的で、19年はプレフェスティバルとして、世界各国から18組のアーティストを集め、市内9会場でライブコンサートを実施する。

 日本/ハワイ間の航空座席供給に関しては、デルタ航空(DL)が5月に福岡/ホノルル線から撤退したが、これはあくまでもDLの世界戦略の中での判断。関係者によると運航状況は必ずしも悪くなかった。実際にDLの撤退を受けてハワイアン航空(HA)が11月26日から週4便での運航を計画しており、ハワイ旅行需要は地方でも健在といえる。

 次なる繁忙期である年末年始に向け、地方発チャーター便の計画も次々発表されている。HISは、チャイナエアライン(CI)を使用して成田、中部、関西、広島発のホノルルチャーターや他航空会社による新潟チャーターなどを予定。日本旅行もCI便のブロックチャーターにより、成田、中部、関西、広島発のホノルルツアーを造成した。

 旅行会社のハワイ旅行の取り扱いは好調だ。今夏商戦でも人気ナンバーワンは揺るがなかった。海外旅行の2大勢力である JTBと HISはいずれも、予約動向に基づく夏の人気方面トップにハワイを挙げた。阪急交通社は6月の海外旅行取扱額が6.4%減に沈むなか、ハワイは前年を上回り好調だった。東武トップツアーズは団体旅行の取り扱いでハワイが好調。4月26.8%増、5月12.5%増、6月12.8%と推移している。

 ただし、ハワイへの旅行市場全体を見ると、必ずしも伸びていない。ハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)によると、日本人訪問者数は1月5.7%増、2月1.1%増、3月0.4%増、4月2.1%増と前年を上回ってきたが、5月から2.1%減、6月1.8%減、7月9.3%減と減少に転じ、1〜7月累計でも0.8%減となった。

さまざまな角度から需要喚起

  大きな要因がハワイ島だ。昨年5月にキラウエア 火山が噴火し、溶岩流が麓を襲った。以降、日本 人の旅行需要はなかなか回復していない。ハワイ島 訪 問 者 数は前 年との比 較で1月20.0 % 減、2月 32.4%減、3月40.2%減、4月35.3%減と大幅減。5 月以降は前年の減少からの反動もあり、増減を繰 り返しているが、絶対数は1万3000〜 1万4000人 台と低迷している。1〜 7月累計のハワイ全体の日 本人訪問者数は前年同期に比べ6736人減少したが、 ハワイ島だけで2万74人もの減少。仮にハワイ島が 昨年並みであれば、全体では1〜 7月に1.5%増と なっていた計算になる。

虹がかかることで有名なハワイ島ヒロのレインボー滝

 もう1つ、目的別に見た要因がMICE需要の伸び悩みだ。日本からのMICE目的客は3月から大 幅減が続いており、1〜 7月累計でも20.3%減。絶 対数にして1万3771人の減少だ。仮にMICEが前 年並みとすれば、ハワイ全体で0.8%増とプラス成 長を維持していたことになる。

 こうした現状を打開するため、ハワイ州観光局 (HTJ)はハワイ島の需要回復に向けて積極的な施 策を講じている。7月には2日間にわたり、現地サ プライヤーと日本の旅行会社による商談会「ハワイ 島サミット」をハワイ島で実施。日本の旅行業界に あらためて島の魅力を訴えた。

 消費者対象のプロモーションでもハワイ島を全面 に打ち出し、メディア広告や SNS発信、交通広告 を総動員して PRに取り組んでいる。さらに人気音 楽ユニット「m-flo」とタイアップし、新曲「EKTO (エクト)」のミュージックビデオを全編ハワイ島で 撮影。音楽を通じてハワイ島の魅力をアピールする など、さまざまな切り口からハワイ島の復活を目指 している。