カンクン偏重から脱却へ、メキシコの多彩なリゾートを発掘

2020.02.10 00:00

セノーテをイメージしたアンダーズ・マヤコバのレセプションエリア。別世界に引き込まれる

アエロメヒコ航空(AM)は昨年 11月、旅行会社を対象に新たなリゾートの発掘を目的としたファムツアーを実施した。カンクン一択からバリエーションを増やしたい考え。カリブ海に面したリビエラ・マヤと太平洋側のプエルト・バジャルタを訪れた。

 カンクン以外のビーチリゾートの発掘には2つの意味がある。1つはカンクンが自然災害に遭った場合の需要の分散。もう1つはAMの国内線需要の促進だ。成田発15時25分のAM直行便に乗ると、メキシコシティの到着は13時05分。同社の国内線はここから46都市を網羅しており、多くのビーチリゾートは数時間でアクセスすることができる。

 人気のカンクンは同日の夕方着で、日本人旅行者の大半はユカタン半島随一のこのリゾートを目指す。一方、空港の南側に広がるリビエラ・マヤに日本人の姿はほとんどない。リビエラ・マヤは全長約193kmの沿岸地域。なかでも特に注目なのが、広大なリゾートエリア、マヤコバだ。

 東京ドーム54個分、約252ヘクタールのマヤコバにはマングローブのジャングルや水路、白砂のビーチが広がり、ローズウッド、バンヤンツリー、フェアモント、アンダーズの4つの高級リゾートとグレッグ・ノーマン設計によるゴルフコースが巧みにデザインされている。共通のゲートを通過した後はそれぞれのリゾートのレセプションへ向かい、そこからカートやミニバス、ボートなどで移動する。

 4つのリゾートの中で最も新しく17年に開業したのはアンダーズ・マヤコバだ。ハイアットが展開するラグジュアリーブランドで、その土地ならではの文化を意識した造りやサービスに定評がある。エントランスを抜けると天然の泉、セノーテをイメージした水のオブジェが出迎える演出は斬新。低層の客室棟は自然の地形に沿って連なり、スタイリッシュな214の客室はラグーンビューやビーチフロントなどさまざまなスタイルにカテゴライズされている。敷地内には各種レストラン、バー、贅を尽くしたスパ、スポーツ施設、ネイチャートレイルなどがそろい、リゾートから一歩も出ずに極上の休日が過ごせる。

 4つのリゾートは個別に運営されているが、宿泊客は他のリゾートのレストランも利用でき、客室にチャージされる仕組み。アンダーズに滞在しながらフェアモントのAAA4ダイヤモンド受賞レストラン「ブリサス」やバンヤンツリーのタイ料理「サフロン」で食事を楽しむことができるのだ。

 プライベート感たっぷりのマヤコバは、未開拓な場所を好むハネムーナーや世界各地を周るゴルファーなどにお勧め。新しいリゾートを求めている富裕層などハイエンドな市場からアピールし、カンクンと明確な差別化を図るのがいいだろう。

観光地にも近い陽気な町

 マヤコバから車で約15分、リビエラ・マヤの中心地プラヤ・デル・カルメンは一転カラフルで陽気なリゾートだ。目抜き通りの5番街には旅行者向けの土産物屋が建ち並び、地元の人々も集うレストランやカフェ、バーもそろいにぎやか。5番街と並行するビーチ沿いにはグランド・ハイアット・プラヤ・デル・カルメンやヒルトン・プラヤ・デル・カルメン、プラヤカーパレスといった高級リゾートが軒を連ね、マヤコバの4つのリゾートとは趣を異にする滞在が楽しめる。

プラヤ・デル・カルメンの 5 番街

 グランド・ハイアットは15年開業。ピラミッドを模した迫力のエントランスを抜け、奥へと続くロビーフロアを歩いていくと、真っ青な海が近づいてくるドラマチックな設計が印象的だ。ビーチに面したプールエリアは開放感にあふれ、地元のアーティストが描いたクジラの壁画アートが昼も夜も目を引いた。

 マヤコバがハイエンド向けなら、プラヤ・デル・カルメンはカップルやファミリーに心地よい雰囲気。コスメル島への船が発着する港も近いので、アクティブ派にも勧められる。また、マヤコバやプラヤ・デル・カルメンはユカタン半島のメジャー観光地に近いのもメリットの1つだ。ユカタン半島の遺跡といえばチチェンイツァが有名だが、トゥルム遺跡もぜひ訪れてほしい。マヤ文明末期の城塞都市という興味深さはもちろん、カリブ海と遺跡の両方を収めることができる絶景の撮影スポットとしても人気を集めている。半島に何百とある神秘の泉、セノーテも外せない。朝一番で訪れたのは、最も人気のグランセノーテ。深い緑を湛えた澄んだ水は淡水で、穏やかな流れの中で遊泳を楽しむことができる。メキシコの地上手配を手掛けるトラベルファクトリージャパンによると、トゥルム遺跡やグランセノーテへはカンクンから向かうよりツアー時間を短縮でき手配上でも有利という。

朝一番で泳いだ人気のグランセノーテ
絶好の撮影スポットでもあるトゥルム遺跡

船で行く無人島ツアーが人気

 太平洋側のメキシカンリゾートといえば、古くはアカプルコ、一時期はロス・カボスが注目されていた。しかし、今回訪れたのは、国内や北米からの旅行者に人気のプエルト・バジャルタ。メキシコシティから国内線で約1時間半の町は聖母教会のある旧市街にスペイン統治時代の面影が残り、大型客船が停泊する港があるのが特徴だ。

 港からは各種ツアーに出発する小型船も発着しており、人気のマリエタ諸島ツアーに参加した。ハイライトは無人島の1つにあるヒドゥンビーチ。岩壁に囲まれた大きな穴の中にビーチがあり、上空が切り取られたようにぽっかり空いているのがフォトジェニックと話題になっている。当日は波が高く、アーチ部分が海面に隠れてしまったため近くの海でシュノーケリングを楽しんだ。ヒドゥンビーチに行くには上陸許可を得たツアー会社のツアーに参加するのが必須。ビーチには沖に停めたボートから泳いで行くこと、1日に上陸できる人数が116人であることに注意が必要だ。

 プエルト・バジャルタ周辺にも見どころは多い。北西へ車で約1時間のプンタ・ミタは岬全体にジャック・ニクラウス設計のゴルフコースがデザインされ、フォーシーズンズやセントレジスといった高級リゾートが点在するエリア。1つのリゾートに腰を据え、ゆったりとした時間を過ごしたいハイエンド向けのリゾートとなっている。

 さらに北へ車で約30分のサヨリータはサーフィンの町として知られるビーチリゾート。小さな町のどこを歩いてもカラフルで、インスタ映えするチャーミングなスポットとして幅広い年代の女性に好まれそうだ。

プエルト・バジャルタの象徴、聖母教会

 拠点となるプエルト・バジャルタは、約100kmにわたるバンデラス湾沿いにリゾートホテルがひしめく激戦区。ハイアット・ジーヴァ・プエルト・バジャルタは、14年にハイアットがジーヴァにブランドを刷新して開業したファミリー向けリゾートだ。カジュアルな雰囲気とオールインクルーシブ型が特徴で、肩肘の張らないリラックスしたムードに満ちている。太平洋に面し、美しいサンセットを望めるのも魅力の1つで、カリブ海のリゾートと差別化できるポイントとなっている。

取材・文/竹内加恵

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