旅人を癒やすフィジアンの笑顔が魅力

2020.02.03 00:00

人の優しさがフィジーの大きな魅力だ。親しみを込めたあいさつ「ブラ」が温かい

日本からフィジーへの待望の直行便が18年7月に再開して以降、日本人旅行者数が大幅に増えている。日本からアクセスのよいリゾートが数ある中で、フィジーが放つ輝きとは何か。昨年11月にフィジー政府観光局が実施したメガファムツアーに参加し、魅力を探った。

 冬の成田から南半球にあるナンディ空港まで約8時間半。到着とともに心身が解きほぐされた感じがするのは、気温のせいだけではないだろう。民族楽器と歌による出迎え、そして明るいフィジアンの笑顔が旅人の気持ちを和らげる。

 フィジー滞在を決める大きな要素は、他の数多あるビーチリゾートと同様、宿泊ホテルである。観光産業の収益がGDPの約30%を占めるこの国には、美しい海に面したビーチを中心にさまざまなタイプのリゾートがあり、多様な客層に対応可能だ。

 まずは離島。フィジーは1島1リゾートが基本のため、リゾートが島を特徴づけているといっていい。333の島々から成るフィジーには選択肢が豊富にあるが、国際空港のあるナンディからのアクセスの良さで選ばれる島の1つがマロロ・ライライ島だ。「リゾート・アイランズ」と呼ばれるフィジー随一の観光スポット、ママヌザ諸島の1島で、ナンディ空港から車で30分ほどの場所にあるポート・デナラウ・マリーナから高速船マロロ・キャットで約50分。海の色がエメラルドに変化してきたら、この島に建つプランテーション・アイランド・リゾートのジェッティ(桟橋)に到着だ。

 「ブレ」と呼ばれる一軒家タイプとホテルタイプの2種類の宿泊施設から成るこのリゾートでは、マリンスポーツのほか、ネイチャーウオークやポリネシアンダンスなど多様なアクティビティーが体験でき、子供連れから若者のグループまであらゆる客層が楽しめる。一方、静かな時間を過ごしたいという向きには、島の南側に建つ姉妹施設で17歳以上限定のロマニ・アイランド・リゾートがお薦めだ。目の前のビーチではモータースポーツ禁止となっているので、バルコニーやビーチに備えられたチェアで波の音と鳥の声を聞きながら、プライベート感いっぱいの休日を満喫できる。カップルだけでなく若い女性の利用も多いそうだ。

大人限定のロマニ・アイランド・リゾートは落ち着いた雰囲気

新たなリゾートに注目

 ママヌザ諸島には、17年にオープンした新しいスポットもある。諸島間は数社が定期船を運航しているが、そのうちの1社サウス・シー・クルーズがデナラウから船で30分足らずの小島、マラマラ島にオープンしたマラマラ・ビーチ・クラブだ。歩いて15分ほどで1周できる小さな島とはいえ、1島すべてを使ったビーチクラブは世界初といい、オプショナルツアーとして人気を呼んでいる。スノーケリングはもちろん、カヤック、スタンドアップパドルボードといったマリンスポーツの器材はレンタル無料。大勢の観光客が日々訪れているが、レストランやインフィニティプール、バーなどから成るメインエリアのほか、島中にハンモックやビーチチェアが設けられているため、混雑した印象はない。カバナを予約すれば、美しいビーチを独占、日がな一日ゆったり過ごすこともできる。エリアの貸し切りもできるのでグループ利用にも便利だ。日本人グループ用に弁当風ランチもアレンジしてくれる。

桟橋の先がマラマラ・ビーチ・クラブ

 沖縄同様、海の美しさを味わうなら離島がお薦めだが、本島(ビチレブ島)にも美しいビーチがある。ナンディから首都スバに向けて海岸線を移動する途上、島南西部に広がるナタンドラがその1つ。ここには長らく小さな宿泊施設しかなかったが、近年、世界的ホテルチェーンが進出し、注目を集めている。

 たとえば、フィジーで初めて国際規格に準じたゴルフ場を有するインターコンチネンタル・フィジー・ゴルフ・リゾート&スパ。洗練されたデザインが目を引くこのリゾートは、客室のベランダにバスタブを備える。強めのマッサージとココナツオイルを特徴とする伝統のフィジアン・マッサージなどスパのメニューも豊富。さらにワンランク上の滞在を望む向きには、広大な敷地の中でも高台に位置する全室スイートのクラブ・インターコンチネンタルがいい。ビーチからは離れるが、優雅な滞在を望むゴルフ客にも最適だ。空港から陸路で移動できる利便性も合わせ、魅力的な選択肢といえるだろう。

 ここ10年で開発が進み、一大リゾートとなっているのがデナラウ・エリアだ。空港から車で20~30分という抜群のアクセスが特徴。「デナラウ・アイランド」という名が付くが、海に突き出た半島で、ママヌザ諸島やヤサワ諸島など離島のリゾートへの定期船が発着するポート・デナラウ・マリーナが至近のほか、ゴルフ場もあり、ヒルトン、シェラトン、ソフィテル、ウェスティンと名だたる国際チェーンのホテルがそろう。

 団体に使い勝手が良いホテルが充実しているのも特徴だ。たとえば、ラディソン・ブル・リゾート・フィジー・デナラウ・アイランドは、隣り合った2室をコネクティングルームとして使える同じ間取りの客室が多くそろい、ファミリーにも使い勝手がいい。離島のリゾートに比べれば、敷地に限りはあるが、大人専用のプールや隠れ場所的なスペースが用意され、ファミリーとのすみ分けもできている。

子供にも大人気のローカルの人々

 こうした多様な宿泊施設に加えてフィジーの魅力を挙げるなら、何をおいてもフィジアンの人の良さだろう。それは、観光客の子供たちの様子を見てもよくわかる。バギーの中で不安げな様子を見せていた赤ちゃんがホテル受付のフィジアンの包み込むような笑顔を見た途端に破顔し、プールサイドで泣きべそをかいていた少年は陽気なスタッフの問いかけにたちまち目を輝かせる。そんな魔法のような光景を幾度目にしたことか。古来、大家族で暮らしてきたフィジアンは子供をあやすのが上手なのだとか。ホテルのキッズクラブを利用した子供たちは皆、滞在中、何度も通うそうだ。

 そんなフィジアンの朗らかさの象徴が「ブラ!」というあいさつ。「こんにちは」を意味するこの言葉に「健康を祈る」の意が込められていることは、温かな声色を耳にすれば納得だ。こんな言葉を幾度となくかけられる国での滞在が快適でないはずがない。「レストランで多少待たされても、明るいブラのひと言で、まぁいいか、と思ってしまう」。滞在中の日本人が笑顔で語った感想が印象的だった。

ココナッツを使うフィジー料理はやさしい味

 フィジー・エアウェイズ(FJ)の成田/ナンディ線が9年ぶりに復活したことを喜ぶ声は、現地で多く聞かれた。「10年前、日本人が大勢訪れていたことを覚えている。今、また増えていて皆喜んでいるよ。日本人は僕たちと同じくリスペクトの心を持っているから大歓迎だ」と語ってくれたのは、1人のタクシードライバーだ。フィジー政府観光局によれば、昨年11月までの1年間にフィジーを訪れた日本人は1万5130人で前年同期比約4割増。7割増となった前年に引き続き大幅な増加を続けている。今年7〜9月には期間限定で直行便が週2便から3便に増便される。日本市場再活性化への期待は高い。

取材・文/佐藤淳子

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