民泊解禁5年の様相 管理業者の要件緩和で担い手は

2023.05.15 00:00

(C)iStock.com/yattaa

民泊が解禁となってから6月で丸5年が経過する。この間、民泊の普及は進んだが、コロナ禍で負ったダメージも大きい。国は観光再興をにらみ、住宅宿泊管理業者の登録要件を緩和する方針だ。これにより家主不在型の民泊の増加が期待されるが、規制緩和は観光にどう作用するのか。

 18年6月の住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行により、それまでグレーゾーン扱いだった民泊が解禁され、都市部を中心に民泊の普及が進んだ。以来、民泊の届け出件数は右肩上がりに増え続け、届け出住宅数も20年4月には2万1385件まで増えてピークに達した。

 しかし、その後はコロナ禍の影響が出始め、事業廃止が増えた結果、住宅数は漸減に転じる。23年3月時点では1万8760件となり、ピーク時と比べて2625件減、割合にして12%も減少した。

 19年12月~20年1月の民泊の宿泊実績を見ると、日本人の利用が約9万5000人、訪日外国人旅行者の利用が約21万人となっている。コロナ禍前には訪日外国人が全体の約7割ものシェアを占めていたわけだ。そんなお得意様の需要が一気に蒸発した結果として民泊の事業廃止件数が増大するのも無理はない。そうした密接な関係性の裏を返せば、訪日外国人需要が回復した際には、宿泊施設の受け皿として民泊のキャパシティー回復が欠かせないわけだ。

 観光産業をコロナ禍からいち早く復活させ、観光の力で地方経済の課題解決や地方創生につなげたい政府は、日本人の国内旅行と並んで訪日外国人旅行の回復が鍵を握ると考えており、民泊サービスの推進に積極的だ。昨年6月に閣議決定された規制改革実施計画では、地域産業活性化策の一環として民泊サービスの推進を挙げ、地方における住宅宿泊管理業の担い手確保のため規制改革を実施するとしている。

割の合わない仕事

 規制改革の方向性について閣議決定では、住宅宿泊管理業を的確に遂行するための必要な体制の要件として、「例えば所定の講習の受講修了者も新たに認めるなどの具体的な方策について、関係者とも連携しながら検討を行い、必要な措置を行う」とし、23年度の措置を求めた。

 政府が住宅宿泊管理業に関する規制改革を実施するのは、この規制が民泊の推進、とりわけ地方における民泊の普及・拡大の大きな壁となっていたからだ。民泊新法では、居室数が5室を超える場合や家主不在型の民泊を運営する場合には、登録を受けた住宅宿泊管理事業者に物件の管理を委託しなければならないと定めている。

 この住宅宿泊管理業者として登録するには要件が定められている。住宅の取引または管理に関する2年以上の事業経歴または実務経験があること、宅地建物取引業の免許または宅地建物取引士の資格を有すること、マンション管理業の登録または管理業務主任者(マン管)の資格を有すること、そして賃貸住宅管理業の登録または賃貸不動産経営管理士(賃管)の資格を有することで、いずれかに該当する者でなくてはならない。

 ただ、宅建、マン管、賃管といった不動産管理に関係する免許や資格などを持つ者の大部分が不動産事業の関係者で、実質的には不動産業者が住宅宿泊管理業の受け皿となっている。ところが不動産業者にとって手間の割に利益が少ない住宅宿泊管理業の仕事を引き受けようという事業者は極めて少ないのが実情だ。

ニーズと裏腹の担い手不足

 住宅宿泊協会は、住宅宿泊管理業者の要件を満たすと思われる不動産業者のうち実際に管理業登録をしている比率は0.8%だと推計する。要件を満たす事業者がいても、民泊の担い手になっていないことが問題だというのが同協会の指摘だ。また住宅宿泊管理業者の7割が東京、大阪、愛知、京都、札幌、福岡といった都市部に集中している。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年5月8・15日号で】

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