育つか有償ガイド 規制緩和で見えた課題と展望

2019.12.02 00:00

訪日旅行事業と通訳ガイドとの新たな関わり方とは
(C)iStock.com/Dgwildlife

改正通訳案内士法が18年1月に施行され、誰もが有償でガイド業務を行えるようになってから2年。規制緩和で目指したガイド不足の解消には至っておらず、新たな課題が浮上している。新団体が設立されるなど解決へ向けた動きも出るなか、有償ガイドの活躍の場は広がっていくのか。

 訪日外国人旅行者などに対する有償の通訳ガイド業務は、長年にわたり国家資格である「通訳案内士」の有資格者にのみ認められてきた。しかし、訪日外国人の急増に伴う不足などもあって、政府は資格の有無を問わず有償での通訳ガイド業務を認める法改正を行った。

 18年1月に改正通訳案内士法が施行されると、新たなビジネス分野として取り組む動きも出てきた。その代表的な事例が、エイチ・アイ・エス(HIS)が訪日外国人旅行者と地元ガイドのマッチングサービスをうたい立ち上げた「Travee(トラビー)」だ。同社は法改正をにらみ、17年6月に専用サイトを開設してガイドの募集を開始。改正通訳案内士法の施行と同時にガイドマッチングサービスをスタートした。旅行者には日本を案内してくれる自分に合ったガイドを探す機能を提供し、ガイドには時間を有効に使い旅行者をもてなしながら副収入を得る機会を提供するのが狙い。個人旅行者を中心に一定の利用があり、浅草寺界隈の観光と和太鼓体験を組み合わせた観光ガイドから、VIPやビジネスマンの通訳など多岐にわたり、ガイド登録数は、全体の2割を占めた通訳案内士の有資格者を含め合計2000人に達した。

 しかし、今年2月、HISはサイトを閉鎖しサービスを終了。事業継続を断念した。この理由について同社は、「当社における事業化、システム構築が期待する水準には至らなかった」と説明するにとどめるが、未経験者を含むガイド人材の育成や利用者の満足が得られる質の担保といった難しさがあったことは想像に難くない。

 それは新たに一般社団法人インバウンドガイド協会が立ち上がった状況にも表れている。ガイド人材の育成とサービス品質向上を目指し、7月に発足。会長に日本観光振興協会理事長で元観光庁長官の久保成人氏が就任し、理事長には日観振前理事長の見並陽一氏、専務理事にはANA総合研究所やJTBなどの幹部が名を連ねた。また、発足当社から千葉県いすみ市と市原市、岐阜県高山市、福島県南相馬市が会員として参画。官民を含む構成メンバーに各所の期待の大きさがうかがえる。

 期待の背景には、通訳ガイドの門戸が開放されたにもかかわらず、利用も育成もはかどっていない現状があるからだ。久保会長は10月の設立記者会見で、「日観振は全国のボランティアガイドを対象にアンケート調査を行っているが、調査対象の4万数千人のガイドの中には法改正さえ知らない者もいる。ボランティアガイドは総じて意識が高く能力もあり、有償ガイドを行えるとの認識が広がれば大きな力になるはず。ただ、独力で学習し、レベルアップするのは難しい面があるため、協会として手を貸していきたい」と述べた。

 協会には、全国通訳案内士の資格を持ち、通訳ガイドの派遣・研修業務に携わってきたランデル洋子氏も副会長に就任した。会見で同氏は規制緩和には反対の立場だったと明かしたうえで、「しかし緩和された以上は資格の有無にかかわらず、通訳ガイド全体の品質向上と管理が必要だと考えており、協会設立に賛同した」と期待感を示した。

新たに検定の創設も

 協会では、通訳ガイドが有償か無償かの違い、あるいは全国通訳案内士や地域通訳案内士といった公的資格の有無に関係なく、訪日外国人旅行者向けに外国語によるガイド業務を行う者すべてを「インバウンドガイド」と総称し、ガイド全体の量と質の向上を図る考え。20年3月をめどにガイド業務に求められる知識やスキルを体系的に習得するためのコンテンツで構成した書籍の出版や、地域の自治体と連携して行うインバウンドガイド講座の開催、インバウンドガイド検定の創設(20年6月実施目標)に向け、準備を進めている。

【続きは週刊トラベルジャーナル19年12月2日号で】