生成AIの使い方 ツーリズムは生かせるのか

2023.07.17 00:00

(C)iStock.com/MaksimTkachenko

チャットGPTに代表される生成AIの活用が旅行業界でも進んでいる。ツーリズムの世界ではこれまでもチャットボットなどAI技術が活用されているが、生成AIの登場はツーリズムのビジネスを大きく変革する可能性を秘める。ツーリズムはこの新技術をどのように生かせるのだろうか。

 いまや生成AIの代名詞的存在となったチャットGPTがアクティブユーザー数1億人を突破するまでにかかった時間はわずか2カ月。ティックトックやインスタグラムをはるかに上回る史上最速記録である。すでに世界中の企業がビジネスへの活用を模索している状況だ。

 日本でもチャットGPT活用事例は増える一方だ。帝国データバンクが6月に実施した調査では生成AIを業務で活用している企業が9.1%、活用を検討している企業が52.0%で、活用・検討が全体の6割を占める。活用中または活用を検討している生成AIの具体名として9割以上の企業が挙げたのがチャットGPTだ。

 またAIプラットフォーム事業などを手掛けるエクサウィザーズが経団連の後援で4月に開催した生成AI関連セミナー参加者を対象に行った調査では参加者の8割がプライベートを含め実際に利用したことがあり、特に金融・保険系企業からの参加者は93.3%が利用経験者だった。調査対象がもともと生成AIへの関心が高いビジネスパーソンであることを割り引く必要はあるがかなり高い割合だ。実際にみずほフィナンシャルグループはすでに日常業務での生成AI利用を開始しており、三井住友フィナンシャルグループもAIアシスタントツール「SMBC-GPT」の実証実験を開始した。

 驚くべきは変化のスピードだ。振り返ればチャットGPTがサービスをリリースしたのは昨年11月末のこと。つまり世界で旋風を巻き起こしている生成AI活用の盛り上がりのほとんどが、わずか半年間ほどの出来事なのである。

 データ学習により正解と不正解を見分ける能力に秀でる識別系AIと違い、生成AIは文章や画像をまるで創造力があるかのようなレベルで生み出せる点が特徴。チャットGPTのようなテキスト生成AIのほか、画像生成AIや文字起こし生成AIなどの利用も広がる。アマゾンのアレクサやアップルのSiri(シリ)はAIを使った音声対話アプリだが自然言語処理技術に優れるチャットGPTはこれらのアプリを大きく凌駕している。

 自然言語処理に優れ、創造性を感じさせるような対話が可能な高性能チャットボットであるチャットGPTが、ビジネスにおけるAI利用に新しい地平を切り開きつつあるのは間違いない。想定される活用方法も多岐にわたる。すでにチャットボットは顧客サポートに活用されているが、高性能化した生成AIの実用化によって、活用の範囲が一段と広がる期待がある。

 各種相談、レコメンド要望などへの対応を行うカスタマーサービスや各種予約、あるいは人間に代わって顧客とSNSでつながりエンゲージメントを向上するマーケティング支援など活用の幅は広がる。また、これまでよりはるかにパーソナライズした対応が可能になる意味で活用の内容がより深度を増すことも期待できる。

大手OTAが軒並み導入

 世界的に旅行業界における生成AIの活用意欲は高い。オープンAIは今年3月にチャットGPTにとって初となるプラグイン(機能拡張のための追加部品的なソフトウェア)を開発した12社を公表したが、その中には旅行業界のエクスペディアとカヤックが含まれていた。その後、エクスペディアはチャットGPTを利用した旅程作成支援などの相談機能や検索機能の強化に取り組んでいる。またカヤックは検索機能のインターフェースにチャットGPTを組み込んでいる。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年7月17日号で】

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