文化庁移転と観光 地方拠点化で期待される効果とは

2023.04.24 00:00

(C)iStock.com/SeanPavonePhoto

文化庁が京都での業務を開始した。移転に伴い、文化観光や食文化に取り組む部署を新設し、観光関連施策を強化する。誘致した京都も移転を文化観光推進のきっかけと期待している。

 中央省庁として明治以来初の移転を実現した文化庁は、京都府庁に隣接する旧京都府警本部本館を改修した京都庁舎での業務を3月27日に開始した。まずは文化庁長官をはじめとした一部職員が京都での業務に就き、大型連休明けの5月15日からは残る職員が業務を開始する。次長や宗務課の職員は業務に一定の区切りがつくまでは例外的に東京で勤務するものの、最終的には全職員が京都に移ることとしている。

 京都移転は東京一極集中を是正したい政府の狙いもあるが、文化庁はこれを機に新たな文化行政を進めたい考えだ。新たな文化行政が求められる背景には、文化芸術立国を掲げる政府決定を受けて、文化財の持続可能な保存・継承体制の構築をより強力に進めていく必要があることが挙げられる。また25年に大阪・関西万博の開催を控え、文化芸術や日本の美を国内外に発信するとともに、文化観光や食文化等の振興を強力に進めていくことが求められている事情も見落とせない。

 今後の文化行政に求められるのは、観光、まちづくり、福祉、教育、産業などさまざまな関連分野との連携強化による総合的な施策推進であり、文化芸術資源を核とする地方創生の推進や戦略的な国際文化交流、海外発信等が必要になる。文化庁はこう説明する。

 この課題認識の下、文化庁は移転に先立ち、17年に地域文化創生本部を京都市内に設置。文化による地域振興や文化財を生かした広域文化観光など、新たな政策ニーズに対応した取り組みを先行的に実施してきた。この地域文化創生本部を3月の文化庁移転に伴い発展的に見直して新設したのが、文化観光推進本部と食文化推進本部だ。

 文化観光や食文化施策を進めるには多くの関係課が関わる。そのため、企画立案機能を強化するには、長官をトップに関係課長や参事官で構成する新たな体制を整える必要があった。長官戦略室とともにこれら2つの推進本部が直轄部署として新設されたのは、そうした事情からだ。

 移転初年度となる23年度の文化観光関連の事業は2つある。文化拠点機能強化・文化観光推進プラン(予算額19億1700万円)は、文化観光推進法の施行を受けて20年度から続けられている事業で、博物館等を文化拠点として機能強化することで地域における文化観光の総合的かつ一体的な推進を図る地域や事業者の取り組みを積極的に支援する内容だ。結果として文化振興・観光振興・地域活性化を好循環させることを目的としている。

 文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光推進事業(18億7500万円)も20年度から始まったもの。来訪者満足度の向上や充実したコンテンツ造成によるリピーターの増加を実現し、より多くの来訪者が文化観光拠点・地域において、文化への理解を深めることを目指している。

京都が目指す一体的な施策

 一方、京都側では、政府が文化庁の移転方針を固めてから、文化芸術、大学、宗教、経済、行政等の関係者が一体となり、オール京都で文化庁京都誘致協議会を立ち上げて移転を実現した。その後、同じくオール京都で構成する文化庁京都移転プラットフォームが機運醸成を推進してきたが、移転を控えた3月20日には名称を文化庁連携プラットフォームに改めた。組織強化を図り、文化庁との連携を強化することで、新たな文化政策の推進を目指すためだ。同プラットフォームでは3カ月に1回程度の定例会や交流会、文化庁との意見交換会を計画しており、意見交換会を通じて具体的な施策につなげることを目指すほか、文化庁と連携した文化事業の開催も検討する。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年4月24日号で】

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