量から質への大転換 新観光立国推進基本計画の検証

2023.04.03 00:00

(C)iStock.com/komezo

第4次となる観光立国推進基本計画がまとまった。コロナ禍による市場および社会の環境変化や以前からの課題を踏まえ、新たな観光立国像を描いたもので、持続可能な形で観光ニッポンの復活を目指す。キーワードは「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」だ。

 コロナ対策の水際措置が大幅に緩和され国境をまたぐ人流の回復に期待が高まると同時に、国内旅行需要増大の呼び水となる全国旅行支援もスタートした昨年10月11日、観光立国推進閣僚会議が開催された。この会議で岸田文雄首相は観光立国の推進に向けた取り組みとして3点を指示した。

 第1に旅行消費の早期回復で、関係省庁の政策を総動員して集中的な政策パッケージをまとめるよう求め、特にインバウンド消費は5兆円超の速やかな達成を求めた。第2に持続的で高付加価値な観光産業の実現への取り組みの加速を指示。第3として大阪・関西万博が開催される25年をターゲットに、持続可能な形で観光を復活させるための新たな観光立国推進基本計画の22年度末までの策定を指示した。第3次計画は17~20年度の4カ年計画で、コロナ禍の影響で改定時期がずれ込んでいたが、ようやく新たな基本計画策定の環境が整いつつあるとの判断だったわけだ。

 岸田首相の指示を受けて観光立国推進基本計画の6年ぶりの改定作業が進められ、3月8日に新たな基本計画案がまとまった。国土交通省の交通政策審議会観光分科会における有識者をはじめとする委員らの検討とパブリックコメントを経てまとまった新計画は3月中に閣議決定される見通しだ。

 新計画がその前提とするのが、コロナ禍を経ても変わらぬ日本観光の魅力と、日本経済における観光産業の重要性だ。新計画は「はじめに」として「我が国には、国内外の観光旅行者を魅了する素晴らしい『自然、気候、文化、食』が揃っており、新型コロナウイルス感染症によってもこれらの魅力は失われていない」と切り出している。またウィズコロナ・ポストコロナにおいても観光は「成長戦略の柱、地域活性化の切り札である」とうたっている。

 旅の意義と価値にも触れている。旅のもたらす感動と満足感が豊かな人生の活力になり、観光によって地域の魅力を感じ家族の絆を育むことでワークライフバランスの充実にもつながると強調。また、住民が地域に誇りや愛着を感じることで「地域社会の持続可能な発展を可能にする」とした。加えて、観光を通じて異文化を尊重し交流することは草の根から外交や安全保障を支えることにもつながり、国際相互理解を増進するもので、こうした観光の多面的な意義はコロナ禍でも変わることはなく、「国際情勢の複雑化が顕著な今、双方向での人的国際交流は、むしろその重要さを増している」とうたっている。

「持続可能な観光」を柱に位置付け

 新計画の最大の特徴は「持続可能な観光」を計画全体のキーワードにの1つに挙げ、政府が総合的かつ計画的に取り組むべき施策として「持続可能な観光地域づくり戦略」を掲げていることだ。「持続可能な観光」はこれまで前面に打ち出されてこなかった概念である。前計画では、魅力ある観光地域の形成の中身として「テーマ別観光を核に据えた持続可能な観光地域の形成」が挙げられていたものの、ロケ地ツーリズムや酒蔵ツーリズムなどの地域共同プロモーションを呼びかける内容で、現在使われる「持続可能な観光」とは別物だ。その意味では今回初めて「持続可能な観光」が基本計画で本格的に取り上げられたと見なしてよいだろう。

 新計画策定の出発点となった昨年11月の観光分科会に議論の叩き台として提出された観光政策の方向性では「持続可能な観光」の観点が盛り込まれてはいたが、必ずしも優先事項でなかった。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年4月3日号で】

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