民泊新法施行から3年 事業廃止増加、コロナ後へどうつなぐか

2021.07.19 00:00

(C)iStock.com/JARAMA

住宅宿泊事業法(民泊新法)施行から3年が経過し、見直しの時期を迎えている。この間、好調なインバウンド需要に支えられ一時2万件を超えた届け出住宅数は、コロナ禍で大幅な減少に転じた。観光庁は環境変化も踏まえ、民泊新法の施行状況を検証する考えを示している。

 民泊新法は18年6月15日の施行から丸3年が経過した。法施行前は旅館業法違反に当たる民泊営業の横行が社会問題化しており、グレーゾーンで民泊が運営される状況について解消が求められた。そのため、法規制を設けて民泊を適正管理することで健全化と普及を目指すことになり、民泊新法の施行となった。

 当初は伸び悩んだ民泊の届け出件数だったが、徐々に増加し施行1年後には届け出住宅数が1万6000件を超えた。観光庁は民泊新法に基づく届け出を促す一方で違法物件には厳しい姿勢で臨み、施行に先立つ6月1日には違法物件の予約取り消しの推奨を民泊仲介事業者に通達。事業者には違法物件の掲載や予約業務を行わないことを強く求めた。さらに観光庁と厚生労働省を中心に構成する「違法民泊対策関係省庁連絡会議」で対策を検討しルールを改正。民泊事業者に、届出番号だけでなく、商号や名称、所在地を、委託する仲介業者や旅行業者に通知することを義務付ける「住宅宿泊事業法施行規則の一部を改正する省令」を19年4月1日付で施行した。

 その後、好調なインバウンド需要の伸びもあって民泊の届け出住宅数は増加。19年12月には2万200件と初めて2万件を超えた。さらに20年4月には2万1385件となったが、これをピークに減少に転じ、今年6月7日時点では届け出住宅数は1万8883件まで減少している。

 一方、事業廃止件数は増加している。19年12月に累計2471件だったが、20年に入ると増え始め、20年12月までに5670件増加。今年6月の累計件数は1万227件に達した。

 民泊需要を牽引してきたインバウンドがコロナ禍で急減し都市圏の民泊事業の撤退が相次いでいる模様だ。民泊の延べ宿泊者数(全国)は19年6~7月には100万人泊を超えていたが、20年6~7月には約16万人泊と8割以上減少している。これに伴い大都市圏の民泊が打撃を受けた。20年4月に特区民泊の施設数が3531件あった大阪市は、21年4月に3218件と300件以上減少。民泊新法に基づく届け出住宅数も20年4月と21年6月で比べると2542件から1862件へ680件減少。同期間に札幌市も届け出住宅数が2388件から1435件に、東京特別区も7367件から6239件に減少している。

 観光庁は事業廃止の理由調査を定期的に行っており、20年11月発表の調査ではコロナ禍の影響が浮き彫りになった。20年9月8日~10月18日に自治体に廃止届けがあった7292件のうち廃止理由の確認が取れる289件の内容をまとめた。廃止理由で最も多かったのは「収益が見込めないため」で49.1%に達した。前回調査(19年11月発表)の7.2%から7倍近い増え方だ。

 また、収益が見込めない原因としてコロナ禍関連を挙げたのは「収益が見込めないため」とした回答者の94.4%を占める。さらに「他の用途へ転用するため」や「事業を行う権利が無くなったため」「届け出住宅の使用権がなくなったため」などさまざまな廃止理由の中でコロナ禍を原因とする回答も全体の51.9%を占める。

見直しの行方は不透明

 民泊新法は施行から3年後に状況に応じた見直しを行うとされ、コロナ禍を経て激変した新たな環境も踏まえた見直しを期待する声もある。住宅宿泊協会は、今年2月に「民泊の発展と観光産業のさらなる成長に向けて」と題する意見書を発表。19年秋以降に民泊の届け出件数が横ばいな理由を「ホストにとって負担の大きい手続きやさまざまな規則」だとし、「コロナ禍を見据え、必要な制度見直しを行い、現状の課題を解決することが、観光需要の早期回復と観光産業並びに地域経済の再成長につながる」と訴えた。

【続きは週刊トラベルジャーナル21年7月19日号で】

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