民泊新法1年目の検証、シェア×観光はどう変化したのか

2019.06.10 08:00

民泊新法施行から1年で何が変わり何が変わらなかったのか (C)iStock.com/Peopleimages

民泊新法の施行から1年が経過しようとしている。施行日以降の民泊宿泊者数は累計で約100万人となった。民泊が合法な宿泊施設としての役割を着実に果たす一方、違法施設も後を絶たず、早くも民泊新法の施行規則の一部が改正された。

 出だしは肝心な民泊事業者からの届け出が増えなかった。新法施行まで1カ月を切っても住宅宿泊事業の届け出件数は全国で724件にとどまった。民泊の大手サイトには数万件のリスティングがあったにもかかわらずである。6月15日の新法施行時点では届け出件数は1桁増えて3728件、受理件数も2210件まで伸びたが、かなり少ないといわざるを得ない状況だった。

 観光庁は「急激に最初からたくさんの件数が出てくるとはあまり想定していなかった」(18年6月20日、田村明比古長官〔当時〕の定例会見)と想定内を強調した。一方で自治体の上乗せ条例の問題や手続きの煩雑さを届け出が伸びない理由に考えられると指摘し、自治体などへ善処を働き掛けていく構えを示した。

 副産物も生まれた。簡易宿所の増加だ。京都市では簡易宿所の許可件数は15年度696件だったが、18年4月に2366件に増えた。大阪市も17年3月に48施設だった簡易宿所が18年4月に651施設に増加。営業日数の上限が決められた民泊より、多少規制は厳しくても営業日数制限がない簡易宿所を選択する事業者が多かったようだ。

 ともあれ、その後は民泊の届け出も増えていく。8月17日時点で6000件を超え、11月16日時点で1万件を突破。19年1月11日時点で1万2000件を超え、最新の5月15日時点での届け出件数は1万6588件と新法施行日の約7.5倍となった。なお届け出件数のうち事業廃止済件数が881件で、5月15日時点の届け出住宅数は1万5707件。新法施行前に5万とも6万ともいわれた民泊の数からすれば少ないが、新法が浸透してきたことがうかがえる。

 自治体別の届け出住宅数を比較すると、顕著な地域差が見られる。北海道や関東、東海、近畿、福岡などが多いのに対し、東北、山陰、四国と、福岡を除く九州の大部分は少なさが目立つ。北海道は2216件、東京も5358件、大阪も2413件に達するのに対し、秋田(9件)や福井(8件)は1桁台。東北は6県合わせて146件、四国も139件だ。

 民泊宿泊者数も伸びている。18年6~7月の宿泊者数は8万3238人(延べ宿泊者数22万3113人泊)だったが、8~9月は2倍の16万9958人(同46万7378人泊)、10~11月も2割伸びて20万5922人(同56万9459人泊)、12月~19年1月も2割増の24万7867人(同72万6467人泊)、2~3月は伸びが1割台まで落ち着いたが28万2250人(同74万7656人泊)となった。新法施行日以降の累計では宿泊者数が98万9235人、延べ宿泊者数は273万4073人泊に及んでいる。

 今年1月、民泊は新法施行から半年経った時点で新たな節目を迎えた。年間最大営業日の180日に到達し、順次、運営の上限に引っかかる。それを見越してか、届け出件数の伸びが鈍化するとともに廃業届も増えている。昨年11月16日時点で196件だった廃業届は同30日には222件に増えた。19年3月15日時点で641件まで増大、さらに5月15日時点では881件で1000件超えもそう遠くない。

 観光庁は廃業届が増えている事態を受け、今年廃業理由の調査を行った。それによると、廃業理由で最も多かったのが「旅館業または特区民泊へ転用するため」で37.6%。以下、「届け出住宅の使用権がなくなったため」(10.7%)、「法令に適合することが困難なため」(10.2%)と続く。また、「その他」(22.9%)のうち81%は他の事業者への運営者変更となった。つまり全体の半数以上が宿泊業の種類を変えたり事業者が変わるが、同一施設で宿泊業を続けることを前提とした廃業届であることが明らかになった。

 一方、大阪市や大田区(東京都)のような特区民泊については、180日規制がないこともあり、増えている。大田区の場合、3月15日時点で認定件数103件・525居室、定員1736人。18年3月の条例改正から1年で認定件数・居室数・定員はいずれも2倍に増えた。

進む違法民泊の排除

 違法民泊排除に関してはどうか。観光庁は新法施行後は違法物件に厳しい姿勢で臨む方針を明らかにし、施行に先立つ6月1日に違法物件の予約取り消しを推奨する通達を行い、民泊仲介業者にも違法物件の掲載や予約業務を止めるよう強く求めた。その結果、たとえば大手仲介業者のエアビーアンドビーが未認可物件の予約をキャンセルし、利用客の混乱を招き“エアビーショック”という事態を引き起こすことになった。

【続きは週刊トラベルジャーナル19年6月10日号で】

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