イベントは立地が大事

2023.12.18 00:00

 山手線を降りる間際、車内広告に台湾関連の展示会の案内が流れたのが見えた。うろ覚えの状態でネット検索したら数多くのイベントが見つかった。その中で主催者がしっかりしていそうなものに行ってみることにした。場所は有明。この手のイベントの開催場所としては交通の便が悪い。銀座からバスで向かおうとしたが満員で2本見送ることに。結局、タクシーを使わざるを得なかった。

 祝日午後の早い時間。高層マンションがいくつもそびえる住宅地の一角ゆえステージでのショーなどもなく、期待していたほどの賑わいはない。チケットは当日券のみで会場で購入。自販機は2台、現金のみの扱い。30人ほど並んでいたが、1時間後に様子を見たら列はできていなかった。入場料は800円でウエルカムドリンク付き、当日に限り再入場可能。しかし、ショーなどがないのに入場料を払うのは抵抗がある。来場者は主に40代以上の友人同士で家族連れは皆無だった。

 普段駐車場として使われる一角が会場で、3辺に飲食7店舗、遊戯5店舗、物販3店舗にワークショップブースが並ぶ。どの店も並ばずに買える状態なので来場者としてはありがたいが、これだけ閑散としているのは出店者にはつらい。

 会場の中心部には丸テーブルや長テーブルが置かれ席数は約100。店舗の数からすれば十分だが、飲食が終わっても居座るグループが多く、なかなか座れない。このあたりは運営側の対策が望まれる。その日は快晴だったからよかったが、屋根がないので雨天となったら飲食の売り上げはほぼなくなるだろう。店のスタッフも「雨が降らないことを願うばかり」と言っていた。

 牛肉麺などいくつかのフードを食べてみた。味は本場に近い。金額はどれも900円前後で入場料を払っていることを考えると高く感じる。遊戯ブースはガランとしている。料金が分かりにくく、実演や呼び込みをしているわけでもないので気分が乗らずにパス。ワークショップブースに行ってみると台湾華語のミニ講座が始まるところだったので参加してみた。料金は30分で1000円。参加者は僕を含め10人で8人が女性。ほとんどが台湾旅行経験者。テント内でテーブルと椅子があり落ち着いて受講できた。ただし1つのスペースを複数のワークショップが時間単位で使用しているので参加機会が限られてしまう。レイアウトを工夫して、出展者ごとのブースを作ったほうが人気は出そうだ。

 滞在時間はせいぜい2時間、ワークショップに参加しても3時間程度だろう。立地、移動容易性、消費金額を考えると来場者はコアな台湾好きに限られてしまいそう。主催者のサイトを見ると、以前は上野恩賜公園で開催し、19年は同じ4日間(42時間)で25万人の来場があったようだが、今回はせいぜい1万~2万人程度ではないか。

 これまで成功していたイベントも会場が変わるとそれまでのノウハウが通用しないことも多い。ゆえにゼロから考え直すぐらいの検討が必要であることをあらためて気づかせてくれた。

黒須靖史●ステージアップ代表取締役。中小企業診断士。好奇心旺盛で旅好きな経営コンサルタント。さまざまな業種業態の経営支援に携わり、現場中心のアプローチに定評がある。

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