みんな大満足の温泉宿

2023.11.20 08:00

 顧問を務める組合の旅行が4年ぶりに再開し、バスを仕立ててN県のT温泉に行ってきた。宿泊したのはその地を代表する高級旅館K。100室を有する大型旅館だ。組合員旅行は過去数十回開催されたが、参加者(みな経営者)から「これまでで一番いい旅館」という声が多数出るほどだった。

 まずは出迎え。女将とスタッフがズラリと玄関に並んでいる。大きな荷物はスタッフがロビーまで運んでくれる。このあたりは旅館のグレードからいえば普通だが、このスタンスが終始一貫しているのがこの宿の素晴らしさだと後で分かった。

 幹事がチェックインを済ませるまでロビーで待つが、長くはかからず段取りの良さを感じた。スタッフに案内されエレベーターに乗ると、ほのかにお香が香り、ホッとした気持ちになる。部屋に入り、われわれが荷物を置いて落ち着くのを待ってスタッフが館内の説明を始める。それぞれの客を見ながらゆっくり分かりやすく話し、好感が持てる。客室は広々として清掃も隅々までしっかり行われている。

 一息ついたところで、同室の方たちと大浴場へ向かう。タオル類は浴場に用意されているので持っていく必要がない。部屋の鍵が2本用意されているのも便利だ。男女の脱衣所の間に休み処があり、入浴後は無料のドリンクやアイスを楽しめる。子供用の菓子も用意してあり、家族連れに好評だ。

 夕食は宴会場だが雑な感じが全くしない。料理は出来立てのものが出て味もよい。品数が多いのだが、フロアマネージャーが配膳係を上手に指揮して、とても手際が良い。また、料理の説明もしっかり行っているし雑談にも乗ってくれて温かみを感じる。部屋に戻ると床が用意されていたが、われわれの荷物や座卓の移動場所に違和感がない。

 スッキリ目覚め、ひと風呂浴びた後、朝食会場へ。全宿泊客が集まるバイキング形式だが、係が案内してくれるので、空いている席を探さずにすぐに座れる。料理の種類は豊富で味も良い。空になっている料理は1つもなかった。

 さて、出発だ。女将やスタッフに見送られ、バスは出発。小山の上に立っているので、玄関から門までは右に左にと坂を下っていくのだが、その角々にスタッフが立っていて手を振ってくれる。これには車内でどよめきが起こった。

 この宿の優れた点を総括すると、接客力の高さとフットワークの良さだ。しかも、どのスタッフにもそれがいえる。僕から見れば、細かい点では「もうちょっと」という所はあるにせよ、日頃、従業員の教育に頭を抱えている社長さんたちだからこそ胸に響いたのだろう。

 バスの運転手とガイドさんにも聞いてみたが、K旅館は乗務員にも「大切なお客さまを連れてきてくれた方」という態度で接してくれるそうだ。部屋も料理もレベルが高く、大浴場の使用もOKとのこと。社内でもすこぶる評価が高い宿だそうだ。帰路、幹事が「みんながこれだけ喜んでくれる宿で良かった。幹事役は大変だったが報われた気がする」と話していたのが印象的だった。

黒須靖史●ステージアップ代表取締役。中小企業診断士。好奇心旺盛で旅好きな経営コンサルタント。さまざまな業種業態の経営支援に携わり、現場中心のアプローチに定評がある。

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