宇宙で地域おこし ツーリズムの可能性はどこに

2023.11.06 00:00

(C)iStock.com/da-kuk

宇宙旅行元年といわれ、人々の関心が一気に高まった21年。以来、日本でも宇宙飛行機の開発やスペースポートの整備が進んできた。さらにここにきて「宇宙」をキーワードに地域おこしを狙う自治体が目立つ。そんな自治体の動きから、ツーリズムの可能性を考える。

 岸田文雄首相が本部長を務める宇宙開発戦略本部は6月、宇宙基本計画を改定した。宇宙開発を取り巻く環境は前回の基本計画を策定した20年から変わりつつあり、改定を検討してきた。新たな基本計画は今後20年を見据えた10年間の宇宙政策の基本方針を示したもの。それによると、国は宇宙の利用を拡大することで基盤強化と宇宙利用の拡大の好循環を確立し、自立した「宇宙利用大国」を目指す。

 これと同時に、宇宙産業を日本の成長産業とするために大きな目標を掲げている。その目標とは、宇宙機器と宇宙ソリューションの両分野の市場規模を2倍に拡大するというもの。20年に4兆円だった市場規模を30年代の早期に8兆円に拡大することを目指す。

 宇宙基本計画では、この目標の実現に取り組むなかで観光産業の役割にも言及している。基本計画が示す目標と将来像のうち、「宇宙利用・探査における新たなる知と産業の創造」として地球低軌道活動に触れている部分がそれだ。具体的には「非宇宙業界も含めた民間事業者の多様な利用や、商業的な技術開発が進展するとともに、宇宙旅行や宇宙空間でのエンターテインメント等のサービスの展開が期待される」と指摘。宇宙を舞台とする娯楽活動の拡大にも期待を示している。

 自治体も宇宙に熱い視線を向ける。米国の民間企業によって宇宙旅行ビジネスが現実化し、宇宙旅行元年とされた21年には、大分県、鳥取県、北海道など11自治体の知事が連名で「地方からの『宇宙』への挑戦」を宣言。世界の宇宙産業は40年代までに現在の37兆円から3倍の120兆円規模になると予測される成長産業と位置付け、地方から「宇宙による新たな地方創生に挑戦する」としている。

宇宙ノオンセン県うたう大分

 大分県は空の玄関口である大分空港の将来像として「ドリームポートおおいた」を掲げ、宇宙港(スペースポート)としての機能を整備し、空港と宇宙港との併用運用を目指している。宇宙港化の経済波及効果を5年間で約102億円と試算しており、射場運営効果で約31億円、建設投資効果で約15億円を見込むほか、観光消費効果として約56億円を期待する。観光では宇宙飛行機体の打ち上げ時に、最初の1~2年で約2000人が集まり、3年目以降は非打ち上げ時も含め年間約8万人の集客効果があると見て、5年で約24万人の来訪を想定している。

 22年には日本航空や米シエラ・スペース、兼松とパートナーシップを結び、大分空港を宇宙往還機のアジア拠点にすることで、アジア初の水平型宇宙港の実現を目指すと発表した。大分空港は宇宙港化のもう1つの目玉として米ヴァージン・オービットの人工衛星を打ち上げる予定だったが、同社が経営難に陥り事業を停止。それによる計画の変更はあったものの、宇宙港化という基本方針は揺らいではいない。

 目立つのが「宇宙」を積極的に取り入れた観光誘致施策だ。おんせん県をアピールしてきた大分は、宇宙港の実現を前提に「宇宙ノオンセン県オオイタ」と打ち出し、21年度からプロモーションを展開。ブランディング強化を図っている。

 キャンペーンは宇宙港ができる予定の大分県に「宇宙人が出没する」という設定で、旅館・ホテルの宇宙人割など、話題を呼ぶ情報発信を行った。この取り組みはテレビ、新聞、雑誌などメディアに取り上げられ、広告換算で3億円近い効果があるなど、想定以上の反響だったという。

 この成功を受けて、22年度には大分県の温泉や自然、食、文化といった魅力を余すことなく紹介する架空のプラネタリウムを「オオイタリウム」と名付け、プロモーションを展開。好評だった宇宙割も継続した。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年11月6日号で】

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