宿泊施設の外国人労働 特定2号対象拡大で進むか

2023.07.31 00:00

(C)iStock.com/Satoshi-K

外国人労働力によって深刻な人手不足を解消しようと19年に導入された在留資格「特定技能」。このほどその対象分野が拡大され、宿泊分野は特定技能1号だけでなく特定技能2号の対象にも加えられた。宿泊産業における外国人労働力の活用が大きく変わっていく可能性が出てきた。

 少子高齢化が進み生産年齢人口が減少傾向にある日本では、深刻化する人手不足への対応が大きな課題として浮上し、外国人労働力により問題解消を図る取り組みが動き始めた。その結果、国内人材確保や生産性向上の取り組みを行ってもなお、人材確保が困難な産業を対象に創設されたのが特定技能の在留資格だ。一定の専門性や技能を持つ外国人を受け入れていくことを目的としている。18年12月には「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立し、19年4月から施行されたことにより、特定技能を認められた外国人は日本で就労できるようになった。

 特定技能には1号と2号の2種類あるが、特定技能1号の対象は宿泊業や航空業、外食業のほか介護、建設業、造船・船用工業、自動車整備業、農業、漁業、飲食料品製造業など計12分野。これに対し、特定技能2号に関しては特定1号の12分野のうち建設業と、造船・船用工業の溶接区分のみが対象とされてきた。

 しかし6月9日の閣議決定により特定技能の在留資格の制度運用に関する方針が変更となり、特定技能2号の対象分野が大幅に拡大され、特定技能1号の対象12分野のうち、介護分野を除くすべての特定産業分野で特定技能2号の受け入れが可能になった。もちろん宿泊産業も、特定技能1号だけでなく特定技能2号での外国人材の受け入れが可能になったわけだ。

出遅れ目立つ宿泊分野

 これまでも宿泊業が対象分野とされてきた特定技能1号による外国人材の受け入れは、制度創設以降の5年間で最大2万2000人を受け入れる運用方針が示されていた。当時は訪日外国人の増加が著しく20年4000万人の訪日外国人誘致目標を掲げていた時代で、毎年2.8%の生産性向上を図り、なおかつ国内人材確保の取り組みや追加的な国内人材の確保(5年間で3万人程度)を進めても、なお不足が見込まれる人数を2万2000人と見積もり、これを受け入れの上限とした。

 特定技能制度の開始前、特定技能による外国人材の受け入れ制度の開始を念頭に、宿泊施設における人手不足の状況等について、宿泊関係4団体を通じて実施したアンケート調査がある。それによると労働力に関する不足感について「すでに不足」が57.2%、「将来的に不足」が37.6%で、両回答で9割以上を占めた。外国人材の雇用の有無(17年度期首時点)については、「あり」が54.7%、「なし」が39.6%で、今後5年以内の外国人材の受け入れ意向については、「あり」が58.0%、「なし」が11.0%、「未定」が31.0%。外国人材の受け入れについては宿泊施設も積極的な意向を持っていることが明らかになっていた。

 しかし実際にはコロナ禍もあり、宿泊分野における特定技能1号による外国人の受け入れは進まなかった。特定技能1号在留外国人数は19年9月末に全体で219人、宿泊分野で6人。新制度スタートからわずか半年後では致し方ない面があるが、22年6月末でも全体が約400倍の8万7000人余りに増えているのに対し宿泊分野はわずか160人。

 最新の22年12月末現在では全体が13万人を超えるまで増えているのに対し、宿泊分野は206人止まり。航空分野も167人でしかない。両分野ともコロナ禍でダメージが大きかっただけに出遅れが目立つ。それにしても宿泊と航空以外の10分野は、最も多い飲食料品製造分野が4万2000人以上、最も少ない自動車整備分野でも1738人で、宿泊分野とは文字通り桁違いの人数となっている。

 宿泊分野の206人の国籍別内訳は、最多がベトナムで83人、次いでミャンマー37人、インドネシア22人、ネパール21人、中国10人。あとはフィリピン3人、カンボジアとタイが各2人などとなっている。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年7月31日号で】

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