大阪IRの通信簿 審査結果に見る期待と課題

2023.06.12 00:00

(C)iStock.com/takasuu

大阪のIR区域整備計画が国の認定を受け、IR設置へ一歩前進した。順調にいけば29年秋冬にも日本初のIRが人工島の夢洲に誕生する見通しだ。しかし、審査では評価基準25項目中、「観光への効果」など3項目の評価点が合格ラインの6割に満たなかった。大阪IRが抱える開業までの宿題について考える。

 日本で初めてとなる統合型リゾート(IR)の開業に向け、政府は4月14日、大阪府・市が夢洲地区に設置を目指しているIRの区域整備計画を認定した。国土交通省が設置した有識者で構成する審査委員会が計画を審査し、岸田文雄首相が本部長を務めるIR推進本部の会合を経て斉藤鉄夫国土交通相が正式決定した。大阪と同様に昨年4月に申請した長崎のIR区域整備計画は継続審査となったため、大阪の計画が日本第1号のIRとして実現する公算が大きくなった。

 審査委員会が大阪のIR区域整備計画を「認定し得る計画」と評価したことを受けて、計画を認定した斉藤国交相は会見で大阪IRの将来に言及。「このIRが日本の魅力を世界に発信する観光拠点になることを期待している」と述べた。

 認定審査は2つの基準に基づいて実施された。1つは施設の規模や事業者の選定等が政府のIR設置方針に適合していることやIR事業について適切な基本計画があること、カジノ事業収益の適切な活用が図られることなど19項目を確認する「要求基準」だ。これら項目は認定を受ける前提として必ず適合しなくてはならない。

 もう1つが「評価基準」で、国際競争力が高く魅力ある滞在型観光の実現や、経済的・社会的効果が見込めるのか、IR事業主体の運営能力や体制が優れているかなどを測る25項目に沿って審査される。評価基準は7人の審査委員が1000点満点で評価し、7人の採点の平均点数の合計が600点以上であることが認定の条件とされた。その結果、大阪の計画は657.9点を獲得し「認定し得る計画」と評価された。

 審査委員が「極めて優れている」と評価した項目は配点の100%を評価点数とし、「非常に優れている」は80%、「優れている」は60%の評価点数を付けた。認定条件に照らすと、全25項目で「優れている」以上の評価を受ければ、評価基準の必要点数をクリアできることになる。逆に「やや優れている」に当たる40%では不足で、「わずかに優れている」の20%、「優れているとは認められない」の0%も同様だ。つまり、平均して全項目で「優れている」以上の評価が必要になる、ある意味厳しい評価基準でもある。

施設の規模に高い評価

 評価基準25項目のうち、「非常に優れている」の評価を受けて配点の80%以上の点数を獲得したのは、施設の規模(配点10点中8.6点)で、MICE施設の規模(20点中15.7点)もそれに近い評価となっている。次いで配点50点で37.9点を獲得したIR事業者等の事業遂行能力が高評価を得た。

 IR全体の施設規模については、大阪IRの延べ床面積と敷地面積がそれぞれ約77万㎡、約49万㎡であり、IR先行地域であるシンガポールのマリーナベイサンズ(開業時の延べ床面積約60万㎡/敷地面積約19万㎡)やリゾートワールドセントーサ(同約34万㎡/同約49㎡)などと比較して同規模以上である点が高評価につながった。また国内の代表的な観光施設と比較しても同等かそれ以上の規模であることから、「日本を代表する観光施設にふさわしい十分なスケールを有している」とされた。

 MICE施設の規模については、国際会議施設が約6800人を収容できるグランドボールルームを持つ計画で、既存の国内最大級の施設であるパシフィコ横浜を上回り、「これまで対応できなかった規模の国際会議が期待できる」と評価された。またMICE施設の将来的な拡張が検討されていることも、「誘客力の高いMICE施設を整備することにより、日本のMICEビジネスの起爆剤となることが期待される」としている。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年6月12日号で】

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