踏み出そう新たな時代へ 産業界リーダーが贈る言葉

2023.05.01 00:00

(C)iStock.com/Hakase_

コロナ禍により採用を中断していた観光事業者の多くが採用再開へと動き出した。新たに業界の扉をたたく新入社員への期待もこれまで以上に高い。観光産業のリーダーたちからは、観光の新時代を担う若者たちへの熱いメッセージが届いた。さあ踏み出そう、新たな時代へ。

 トラベルジャーナルでは観光産業の主要企業を対象に採用状況を尋ねるアンケートを実施し18社(旅行7社、航空3社、鉄道3社、ホテル5社)から回答を得た。それによると18社中13社が今年4月の採用数を前年より増加させた。18社中12社が減少と回答した昨年とは正反対の結果で、1年間で状況は採用縮小から採用拡大へと逆転した。

 2年間にわたって採用を中止ないしは人数を絞ってきたことへの反動という側面はあるものの、今年の調査では増加と回答した比率の大きさが特に目立つ。今年は18社中13社の72%で、20年の21社中13社の62%を大きく上回る。20年は入社式の中止などはあったものの企業側も大半が「採用に影響はなかった」と述べており、いわば平時の数字だったことを考えれば、今年は採用活動の潮目が完全に変わったことを示している。

 業種別に見た採用状況の変化で最も目立つのが旅行会社の積極姿勢だ。昨年は採用を増やした旅行会社は1社もなかったが、今年は5社が採用を増やした。採用人数そのものも昨年は各社合わせてもわずか86人(人数非公表の1社を除く)だったが、今年は6倍以上の556人に拡大している。

 ホテルも5社中4社が採用を増やした。唯一、採用を減らしたアパホテルは「コロナ禍で抑制されていた他社の採用活動が活発化したため、母集団形成に苦戦した。前年度と同じ施策では集まりが悪く、年度途中で施策を増やすなど対応を迫られた」としており、人材獲得競争が激化したことが少なからず影響したようだ。

 航空3社も採用を増やしているが、鉄道だけはやや動きが異なる。鉄道はホテル以上に装置産業としての規模が大きく、航空以上に公共性が高いことから、急激な事業縮小や部分休業、運行ダイヤの大幅な間引きといったコロナ対応が難しかった。それだけに一定規模の人員体制を維持し続けなければならず、3社ともコロナ禍でも3桁採用を続けてきたが、今年は2社が採用人数をやや絞った。

24年はさらなる採用拡大へ

 24年4月も引き続き各社は採用拡大を目指している。採用を増やす計画(再開含む)と回答したのは18社中14社。23年はグループ内一部企業のごく少数の採用に限定していたKNT-CTホールディングスは24年に本格再開予定。今年並みと回答した3社の中でも東武トップツアーズは「前年並みをベースとして増やす方向で考えている」としており「増加」に近い「並み」といえる。

 こうなってくると人材獲得競争の激化は必至だ。採用企業側からは競争激化を警戒する声が寄せられる。特に危機感を募らせるのはホテル業界で、「売り手市場はしばらく続くと思われ、企業が選ぶ時代から学生に選ばれる時代が到来している」(日本ホテル)のほか、「新規ホテルの開業を予定しているが、それに向けた採用が予定通り進められるか不安」とするホテルもある。

 旅行会社の危機感も強い。エイチ・アイ・エス(HIS)は多くの企業で採用意欲が高まっていることや採用活動の早期化、企業の情報発信の多様化等による影響もあり「十分な母集団を形成することが年々難しくなっている」としている。別の旅行会社は「若者の旅行離れやコロナによる業界イメージの悪化で、人材の獲得が困難になってきている」と現状を分析する。

 東武トップツアーズはコロナ禍で各旅行会社が新卒採用を取りやめたり減少させた21・22年とも70~80人規模の新卒定期採用を維持し中途採用を含む採用数は年々増やしてきたが、「人材採用が売り手市場になりつつあるなかで、学生自体の就職活動への考え方や捉え方に変化が出ている」と説明する。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年5月1日号で】

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