ゲームがつくる交流市場 ニッチからマスへの変貌

2023.04.10 00:00

(C)iStock.com/D.Lentz

ゲームを楽しむ習慣はもはや若年層だけのものでなくなり、ゲームによって形成されるオンラインコミュニティーは世代を超えて広がりつつある。かつてのニッチからマス市場に変貌しつつある市場を、観光産業はどのように受け止めて活用していけばよいのだろうか。

 ゲーム機を保有し、週1回以上オンラインビデオゲームに参加している消費者は全世界で3割を占めるまでに増大した。デジタル環境にアクセスできる消費者の55%がスマホゲームを楽しんでいる。こんな実態が国際的な市場調査会社の英ユーロモニターインターナショナルの調査で明らかになった。同社は23年トレンド予測のなかで、「ゲーム人口は急増している。かつてニッチだったこの分野は、いまやマス市場の商機を意味する」とし、ゲームの時代の本格的な到来を予測した。そのうえで今後の重要性を指摘したのが企業の対応だ。「いかにして自社製品やサービスをゲームの時代の消費者層に合わせられるか。ゲームという娯楽を自社の戦略計画にどのように取り込めるかを考える必要がある」としている。

 調査によると、22年時点でオンラインビデオゲームをプレイすることに関心のある消費者の割合はZ世代やミレニアル世代で50%を超え、40歳以上を指すX世代でも約4割を占めた。団塊世代も例外でなく、22%が関心を示している。

 全世代を対象とした調査でも、消費者の30%がゲーム機を所有し、37%が週1回以上オンラインビデオゲームに参加していると回答。世代間格差も少なくなり、ゲーマーに対して多くの人々が持っていた固定観念もなくなりつつある。

 このように大衆化したゲームを介してつながるオンラインコミュニティーは、同じ趣味を持つ消費者が世代を超えて集う場として機能しているのが実態だ。そうした流れのなかで、eスポーツは熱狂的なファンを生み出している。コンピューターゲームやビデオゲームを使って対戦するこのeスポーツ競技は、応援しているチームやプレーヤーが愛用しているブランドを購入する現象も引き起こしている。

 eスポーツに対する注目度の高まりは企業の関心を引き付けずにはおかない。ゲーム文化を取り込むことでプレーヤーを自社の顧客として呼び込む商機を得られるからだ。ユーロモニターによると、eスポーツのスポンサーシップ契約総額の見込み成長率は22年に12%に達しており、一流ブランドが人気ゲームシリーズや有名なゲーマーと複数年のスポンサーシップ契約を結んでいる。

 ゲームとの関係をさらに進化させている企業もある。例えば仏化粧品大手ロレアルグループのメークアップブランド「メイベリンニューヨーク」は、ゲーム開発企業のジンガと提携し、ショッピング広告とモバイルゲームを組み合わせたミニゲーム「Maybelline Mascara Merge」を開発した。ジンガのゲーム内にミニゲームとして組み込みプレイしてもらう仕掛け。同社のマスカラ製品の知識が必要なゲームで、クリアすればポイントを提供する。ゲーム利用者のメイベリンへのエンゲージメントを高めるのが狙いだ。

ゲームはもはや一大メディア

 日本国内でもゲームやeスポーツの普及速度は確実に上がっている。経済産業省は「Z世代におけるeスポーツおよびゲーム空間における広告価値の検証事業」を行い、検証内容を公表。それによると、今後の消費者の主要層となっていくZ世代のインターネット利用時間の内訳はSNSが28.3%、動画共有サービスが35.3%、ゲームが14.5%を占めた。Z世代の1週間の平均プレイ時間は7.2時間に達している。

 男性の動画共有サービス視聴における好きなジャンルのランキング1位は、10代・20代ともゲーム実況だ。このため検証事業では「つまりインターネット利用のほとんどがゲームをプレイしているか、視聴しているかになる」と分析し、「ゲームをマスメディアといっても過言ではない」としている。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年4月10日号で】

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