観光業界キーパーソンの22年回顧と展望③

2022.12.19 00:00

トラベルジャーナルが観光業界のキーパーソンに実施した「22年のニュースランキング」に関するアンケートから、自由記述欄の回答を紹介する。ニュースランキングの結果は週刊トラベルジャーナル22年12月19・26日号で。

「10月の水際対策の緩和でようやく訪日・海外旅行ともに動き出した。全国旅行支援で国内旅行も活発化し、22年後半はコロナによる抑制から脱却して、旅行・観光業界の復活への一歩となった。しかし、入国時PCR検査の免除のためにはワクチン3回接種が必要であること、感染症分類が2類相当のままであることや、いまだ再開した空港が限られることが足かせとなり、効果は限定的だと思われる。人手や観光関連資源の不足など、問題は山積しているが、業界全体で力を合わせて乗り越えていきたい」

「コロナ禍で動きが鈍っていた観光業界にようやく光明が見え始めてきた気がしている。大打撃を受けたこの約2年間を無駄にすることなく、この間に得られたさまざまな新たな経験をプラスにすることで、観光業界がこれまで以上に躍進されることを祈念している」

「欧米に遅れてようやくの水際緩和というのが22年の最大のニュース。東アジア全体の規制が長引いたが、ここからどれだけ立ち遅れた経済回復を遂げられるか、非常に重要な節目となる。しかし、人員がボトルネックになっているところは多く、どれだけ需要回復に対応した供給回復が可能かはいまだ疑問」

「円安効果もあるが、安売りを続けていては供給力を回復するのに必要な雇用条件改善なども難しい。“安くたくさん”からの脱却にどれだけの事業者が向き合えているのかも疑問。チャンスをものにできるか、23年は正念場の1年となるだろう」

「行動規制、水際対策の緩和で人流もだいぶ回復してきた一方、従前の考え方では生き残れないことを突きつけられていると感じる。さまざまな形での誘客、地域の魅力を発信する取り組みを進めていく必要があると同時に、安心・安全な観光、持続可能な観光に向けた取り組みを推進しなければならない」

「観光競争力で日本が1位を獲得したことは大変喜ばしいが、観光立国の目標を達成するためには、安全や環境への配慮を自分事として取り組んでいくことが不可欠だと思う」

「旅行に多様な付加価値が求められる傾向は続くと考えている。例えば、旅行をしながら地球環境や地域のサステナビリティーに貢献できる工夫、宿や観光地など受け入れ側のサステナビリティーへの取り組みや配慮は、これからの旅行に求められることの代表例」

「いまだに海外旅行は若干の自粛モードがある印象だが、旅行業界に従事する人材こそ、海外旅行に積極的に出かけるべき」

「コロナの影響により2年以上にわたって移動が制約されたことに加えて、地球規模での課題としてカーボンニュートラルが求められるようになったことで、人類の移動に対する価値観や行動様式は大きく変容し始めている。今後はより価値の高い旅に寄り添うことができる事業者に集約されていくことが予想される」

「コロナに怯え、コロナを言い訳にして本質的には何もしない事業者や行政やDMO。逆にコロナを好機として捉え、さまざまなチャレンジや投資を行い、高度な人材を獲得している事業者や行政やDMO。この3年間に大きな差が付いたと思う」

「コロナ禍の後にロシアによるウクライナ侵攻が発生したうえ、さらに歴史的な円安が重なったことで、日本のアウトバウンド市場がますます苦境に立たされることとなった。当面は感染防止を図りつつ、インバウンドの復興が急務であると考えられる。今後最も重要なのは、日本の各地域における魅力発掘に注力することではないだろうか。オーバーツーリズム問題も鑑み、一部の観光地に観光客が集中することを避けるための政策が求められる」

「コロナ禍の中にあって、安定した団体旅行として唯一動いていたのが修学旅行ではなかったかと思う。そのため、観光業界の関心も集まったが、ウィズコロナで一般の団体旅行が復活し、インバウンドも再開されるようになると、業界の目がそちらに移ってしまい、修学旅行への関心度が低くなってしまうのではないかと懸念している」

「まずは旅行業の信頼回復が急務だと思う。旅行業全体への不信感が増していることに対して、業界はあまりにも無頓着」

「大手旅行会社のビジネスモデルの非旅行業化が急進。もう手遅れかもしれないが、戦前からコツコツと築いてきた価値創造産業は終焉を迎えようとしている。収益率が高くても人材派遣業に就職したのでないと、若手を中心に旅行業を去る知人が多く悲しい。旅行業に携わる人の多くは、収益よりも旅を通じてお客さまに喜んでいただくこと、モチベーションに働いていた人が多かったことがあらためてわかった」

「ようやく3年にもわたるコロナ禍が終わりに向かおうとしており、再開、回復に向かうニュースには目が向きやすい。しかし、ここで大事なのは、観光競争力で日本が1位になっているという誇るべき事実であり、それをどう活用していくべきかの中期的なビジョン。その意味で、新たな観光立国推進基本計画には現実的かつ野心的な議論が盛り込まれるべきである」

「無視できないのは諸外国に比べて日本のコロナ規制緩和が遅れていること。入国時にワクチン3回が必要なこと、感染症法におけるコロナの分類が引き下げられていないこと、そして脱マスクが進まないことなど、すでにコロナを普通の病気と見なしつつある欧米諸国との落差が大きい。第7波、第8波と煽られ続けているばかりでは、旅行マインドは上がらない。残念なのは旅行・観光業界の側から、改善を求める動きが見えないことだ。全国旅行支援のような補助に頼るのではなく、規制や自粛をなくしていく方向に社会や世論を変える努力をしていくべき」

「もしも自分が外国人旅行者だったら、過度に消毒を求められ、マスクで笑顔の見えない人々の国など、また訪れたいとは思わない。プロ野球やJリーグを例に取ると、興行自粛→無観客開催→定員の半分→定員制限なし→声出し応援解禁のように、段階的に正常化へのロードマップを進めている。旅行・観光業界も盲目的に規制を続けるのではなく、むしろ旗を振ってコロナ終了への道を探るべきだろう」

「コロナ感染症への対応も3年近くとなり、やっと人流も回復してきたと感じている一方、この間、業界を去っていく人材が後を絶たず、人手不足が深刻になっている。今後の需要の回復に向けて、産業を支える人材への投資が必須だと感じている」

「長すぎた鎖国により、もともと厳しかった人材確保がさらに厳しい状況となった。これは相対的な観光産業の地位と発言力の弱さに起因するものである。観光立国の政策開始から10余年がたち、またコロナ禍を経たいま、これまでの期間を総括し、本質的かつ具体的な道のりを明示すべきと感じている」

「新型コロナウイルス感染拡大により観光業界に大きな変化が生じて3年がたとうとしているなか、旅行業界は旅行素材を組み合わせるプラットフォームビジネスと、地域や人との交流から学びや気づきを得られる価値ビジネスの二極化が進んでいくと感じている」

「コロナ前に比べてわずかな需要回復にも人手不足が顕著になるということは、観光という産業に対して若い世代が魅力を感じていないことの裏返しだと感じている。旺盛な需要を利益に結び付けず、価格のみでの競争、劣悪な労働条件、低い賃金水準のまま何ら改善の努力をしてこなかった政治、行政、民間の責任は大きい」

「水際対策緩和の遅れによるMICEの国際競争力低下は傍から見るより深刻である。特に観光庁はけん引役にならなかった責任を感じるべき」

「知床遊覧船の事故と雇調金の不正受給は、コロナ禍で苦しむ業界から安心・安全・信頼という最も大切なキーワードを奪ったいまいましい事態だと感じている。国民の信頼を取り戻すのは容易ではない」

「歴史的円安と相変わらずの燃油費高騰でも、3年ぶりの海外旅行需要に追い風を感じている」

「旅行業界の限界を感じていたところ、業界を飛び出し他業種との交流において旅行業ならではの特性を発揮しているMaaSの事例を知り、とても希望を感じた」

「世界的な感染症の流行によってなえてしまった旅行意欲をどう取り戻すかが問題。シーズンによる繁閑の波を最小限に止める工夫はないものかと痛感する」

「コロナがくすぶり、戦争が始まった1年。海外旅行はまだ夜明けが遠く、インバウンドはコロナ前に戻る方向性が見えてきた。国内旅行には人々の強い旅行欲を感じる。ビジネストリップについては、オンライン会議の普及によってコロナ前に戻らないのではないか。大きい者、強い者が生き残るのではなく、変化に対応できる者が生き残るということを実感した年だった」

「コロナ禍という長いトンネルの出口がようやく見えてきた1年だった。水際対策の緩和による海外・訪日旅行の再開と全国旅行支援の開始による国内旅行の本格的復活は、タイミングの遅れやスキームの不備に業界からは不満の声もあったが、出口に向けて一定の前進をもたらした。ただ、ウクライナ戦争による世界の混乱や、異常な円安に伴う物価高や原油高など、観光業の前途は依然として不透明だ。難局打開に当たり、業界の一致団結した姿勢がいまほど求められている時はない」

「国内旅行に明るい兆しが見えてきたとはいえ、海外旅行の回復にはまだまだ時間がかかることを痛感させられた22年後半だった。同調圧力や非合理的思考に流れてしまう国民性を嘆いているばかりでなく、もういい加減、真の海外旅行の復活に向け、業界として具体的なアクションを起こさなければならない。これからの半年で海外旅行の復活が実現しなければ、当分復活はありえないとすら思ってしまう」

「新プラ法導入が、いままで意識が薄かった観光業界に大きな原動力を与えたり、宇宙への旅行が急激に身近な存在になりつつあったり、いままでの旅のあり方が大きく変化するのを感じた」

「3年にわたるコロナ禍も収束が近づき、欧米諸国ではいち早く市場が回復している。ウィズコロナの戦略からポストコロナの戦略へと転換すべきタイミングにあるものの、ワクチン接種業務等の非旅行事業に業界の時間を奪われている。多少のリスクを覚悟して思い切った転換を図らないと、世界から取り残されてしまう」

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