進化するペット同伴の旅 運輸大手が環境整備に本腰

2022.06.27 00:00

(C)iStock.com/nycshooter

ペット同伴の旅行需要を掘り起こす動きが広がりを見せている。JR東日本やスターフライヤーといった運輸企業が専用列車や新サービスを試し、ホテルチェーンはペット同伴可の施設を増やしている。コロナ禍でペットを飼い始める人は増加しており、さらに活気づく期待が高まる。

 ペット同伴の旅を取り巻く環境はこのところ急速に変化している。象徴的なのはホテルだ。2月に東京・芝公園で「inumo芝公園 by Villa Fontaine」が開業。「イヌモ」の名称どおり愛犬家がターゲットで、ペット同伴をテーマにした特化型ホテルだ。こうした宿泊施設は観光地にあるペンションなどでは珍しくないが、大手ホテルチェーンの運営による都心のホテルとしては異色の存在。運営する住友不動産ヴィラフォンテーヌは東京を中心に大阪や神戸、京都などで26ホテルを運営する大手チェーンで、伊豆高原でペット同伴可能なホテルを運営しているが、都心部ではこれが初めて。しかも、ペット同伴可を超えて、ペット同伴利用に特化するというとんがりぶりだ。

 一昨年の10月には、キンプトン新宿東京が開業している。インターコンチネンタルホテルズグループの一員で最先端のスタイルを具現化するラグジュアリーブティックブランドが日本に初進出した。このホテルの開業が愛犬家たちをざわつかせたのは、レストランや館内のほぼすべてのエリアにペットを同伴できるほか、愛犬をケージに入れる必要がないからだ。リードを付ければ愛犬と館内を移動できるのも愛犬家の心を大いにくすぐった。都心のそれもビジネスエグゼクティブが宿泊したり、大人のデートに使われるレストランやバーがあるホテルで、このように自由な形で愛犬同伴の利用ができるホテルが登場しようとは、少し前までは考えられないことだった。

家庭で増すペットの存在感

 ホテルの背中を押しているのは、愛犬家や愛猫家をはじめとするペット愛好家の存在感の大きさだ。ペットフード協会の統計によれば、21年に全国で1605万頭以上の犬猫が飼育されており、1083万世帯(犬と猫の飼育世帯の重複あり)が犬猫を飼育していると推計される。これは児童のいる世帯数に匹敵する数であり、いまやペットは家族ともいえる存在になっている。

 飼育頭数・世帯数は猫が増加傾向にあるのに対し、犬は12年の1153万頭・908万世帯から21年は710万頭・566万世帯と長期的に減少傾向にある。しかし、コロナ禍を機に新たに飼い始める人が増加し、19年は約35万頭だった新規飼育者の飼育頭数が20年には約42万頭に増加。21年も約40万頭と19年を上回っている状態だ。新規飼育世帯数は2年連続で伸び、21年に38万世帯を数えた。

 経済産業省によれば家計のペット向け支出は拡大傾向にあり、ペット関連産業も堅調に販売を伸ばしている。ペット・ペット用品販売額は16年の約2500億円から21年には約2850億円となり、5年間で約14%伸びた。また家計におけるペット関連支出も20年までは毎年増加。20年は前年比で約2割増加しており、21年はわずかに減少したものの、それでもコロナ前の19年との比較では12.4%増となっている。経産省は「テレワークにより在宅時間が増えたことで、ペットと接することが増えたり、コロナ禍で癒やしを求めて新たに飼育する人が増えたことなども要因のひとつとして支出が拡大したと考えられる」としている。

 また民間シンクタンクの調査では、ペット関連産業の市場規模が1兆6000億円を上回るとの分析もなされている。

同伴フライトを実現

 ホテルをはじめとする宿泊施設よりさらに公共性が求められる交通・運輸機関では、ペット同伴利用客への対応が遅れ気味だった。しかし、そんな状況にも明らかな変化が見てとれる。

【続きは週刊トラベルジャーナル22年6月27日号で】

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