動きだす大阪 万博と観光復活へのロードマップ

2022.02.28 00:00

(C)iStock.com/Promo_Link

東京五輪を終えた日本の観光産業にとって、次なる大型国際イベントとなる25年の大阪・関西万博。開催地ではコロナ禍で傷んだ観光産業復興への期待が高まる。観光関連機関や経済団体が観光戦略案を打ち出すなど、動きが活発になってきた。

 いまから約半世紀前、1970年に開催された大阪万博は期間中に延べ6000万人以上を集客し、計算上は国民の2人に1人以上が会場に詰めかけるという空前のブームを巻き起こした。その記憶は大阪や関西の人々に現在も刻まれている。地元大阪の観光産業界や経済界にも、学童あるいは多感な青春時代に万博の熱気を浴びた体験を持つ関係者は少なくない。

 大阪商工会議所地域振興部の楠本浩司部長は、「70年の万博が『世界を相手にする気概の源泉にもなった』といった話を幹部からも聞く」という。2025年の大阪・関西万博への期待も、また違った意味で大きい。「世界がコロナ禍を克服して初めて迎えることになるはずの最大級の国際イベントで、幅広い世代が期待に胸を膨らませる」と考えられるからだ。経済界の期待は高い。

 関西2府8県が参加する広域連携DMOの関西観光本部は、今回の万博が大阪万博ではなく「大阪・関西万博」であることに期待を見いだす。「コロナ禍で厳しい環境に置かれる関西の観光産業関係者にとって、大きな光であることは間違いない。1970年の万博の来場者6400万人に対して今回の想定は2820万人だが、客層は異なるはず。350万人の訪日旅行者も望める。来場者の消費効果への期待は高い」。東井芳隆専務理事はこう語る。

 大阪府と大阪市も万博へ向けた体制をさらに強化。1月1日付で万博推進室を共同で設置し、大阪パビリオンの建設を含む開催に向けた準備を加速している。

大商がマーケティング強化を提言

 大阪商工会議所は昨年9月、2025年万博とその後の大阪の観光振興に向けたマーケティングアプローチに関して、大阪府・大阪市に「ポストコロナ時代の観光復活に関する要望」を提出した。22年度を観光復興の起点と位置付け、実効性の高い観光振興施策の実施を求める内容だ。要望は①観光復活に向けたビジョン、目的、戦略、戦術の早急な策定、②定量・定性の両軸でのマーケティングアプローチの実施、③マーケティング調査の継続実施と定期的な観光戦略の見直し、④大阪・関西万博を契機とした都市魅力の創出・発信、⑤観光中核人材の確保・育成の5つ。このうちマーケティングに2項目が挙げられていることでもわかるように、マーケティング拡充の必要性を強く訴えている。

 楠本部長は、「万博に向けて観光振興を図り、復活を遂げるためには、これから当面の間、国内観光需要を取り込みつつ歩みを進めていく必要がある。ところが、国内観光に関するマーケティングデータが乏しいのが現状。アフターコロナで始まる観光のニューノーマルを探るためにも、データがなくては始まらない」と背景を説明する。大阪には大阪観光局があるものの、インバウンド振興を目的に設置された組織で、国内観光のマーケティングにまで手が回らないのが実態だった。そこで国内旅行振興に関し予算手当てを含めた行政の支援を実現するのが、今回の要望の大きな目的となっている。

 その一環として、大商は昨年12月には大阪観光局やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)と観光市場活性化に向けたビジョン・戦略策定の協定を締結し、大阪観光に関するマーケティング調査を連携して実施している。国内観光マーケティングに長けたUSJの知見とノウハウを生かし、コロナ禍で変化した消費者の観光意識を実態調査するもので、大商が3者連携を働きかけた。

【続きは週刊トラベルジャーナル22年2月28日号で】

関連キーワード