空飛ぶクルマ 万博で実用本格化目指す次世代モビリティ

2022.02.07 00:00

(C)iStock.com/PhonlamaiPhoto

次世代モビリティとして期待される空飛ぶクルマの実用化が視野に入ってきた。世界各国のベンチャーや航空機メーカーが急ピッチで機体開発を推進中だ。日本では国や自治体のバックアップ体制も整備。25年大阪・関西万博での実用本格化も見えてきた。

 空飛ぶクルマといえば、一般的には地上を走り空も飛べる空陸両用車を想像するだろう。実際に米国のベンチャー企業テラフージアやスロバキアのクラインビジョンは空陸両用車を開発。クラインビジョンはAirCarで昨年6月、初の都市間飛行に成功し、欧州の航空規制当局の認証取得を目指す次のステップへと進んでいる。

 しかし世界が注目する空飛ぶクルマは空陸両用でなく、地上は走らずもっぱら空中を飛んで移動するもので航空機に分類される。期待されるのは自動車に必須の道路がいらず都市部でも渋滞知らずという利点があること。それに加え、飛行機に必須の滑走路のような大掛かりなインフラが不要で、離島や山間部での移動も容易であること。さらには環境に優しく将来的には個人使用も可能な移動手段として電動化や小型化が可能であることだ。こうした望みを満たす乗り物として空飛ぶクルマが期待されている。

 空飛ぶクルマに明確な定義はないものの、こうした条件を満たすものとして世界中で開発競争が繰り広げられているモビリティの機能的な特徴は、エコな電動式で垂直離着陸する機体であり、電動垂直離着陸機の英語の頭文字を取ってeVTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft/イーブイトール)と呼ばれる。あるいは都市間移動に最適な使用イメージからUAM(Urban Air Mobility)と称されることもある。

 世界的にeVTOLの開発が急速に進む背景にはeVTOLを支える各種技術の進化がある。10年ごろから市販が本格化したドローンの技術が自律制御や遠隔操作技術を含み飛躍的に進化したこと、電動自動車開発に並行してバッテリー技術や自動運転技術の進化とコスト低下が挙げられる。

 日本でも機体開発が進む。スカイドライブは空飛ぶクルマの開発を目指し12年に発足した若手技術者の有志団体CARTIVATORを前身とし、有志の1人で16年までトヨタ自動車に在籍していた福沢知浩氏(現在のスカイドライブCEO)らが18年に創業したベンチャー。伊藤忠商事やENEOSイノベーションパートナーズ、大林組、日本政策投資銀行、三井住友ファイナンス&リースなどが出資し、20年には日本で初めて公開有人飛行試験を成功させ、これまでに50億円以上を資金調達している。

 昨年10月に日本で初めて空飛ぶクルマの、航空法に基づく型式証明を国土交通省に申請、審査が進められることになった。今年1月に開催された世界最大規模のテクノロジー見本市CES2022にも出展し注目を集める。日本では25年に大阪ベイエリアでのサービス開始を予定する。

 東京大学発ベンチャーで、ボーイングが20年に主催した世界コンテストGoFlyでディスラプター賞を受賞したのがテトラ・アビエーション。1人乗りの小型eVTOLの開発で先行する。18年にプロジェクトを立ち上げ、20年には米連邦航空局(FAA)の試験用認証を取得。米国では購入希望者へ22年度中の機体引き渡しを開始予定だ。

 eVTOLは大きく2種類に分けられる。マルチコプター型は小型ドローンをそのまま大きくしたような構造で、少人数・近距離移動に適し機体価格も抑えられる。一方の固定翼付型は大型で比較的距離の長い移動に適するが価格はヘリコプター並み。マルチコプター型は山間地や離島、都市と近郊を結ぶシチュエーションでの利用が想定されている。

政府が描くロードマップ

 政府も積極支援の方針を打ち出す。国交省と経済産業省は18年8月に合同で空の移動革命に向けた官民協議会を設立。日本における空飛ぶクルマ実現に向け官民の関係者が一堂に会する場を用意した。同年12月開催の第4回会合では「空の移動革命に向けたロードマップ」を取りまとめた。

【続きは週刊トラベルジャーナル22年2月7日号で】

関連キーワード