観光庁予算の全容 新旧の課題解消と産業発展への使途

2024.02.12 00:00

(C)iStock.com/masamasa3

観光庁の24年度当初予算案は、訪日旅行需要の急速な回復に伴う国際観光旅客税の増大に支えられ、前年度を大きく上回る規模となった。コロナ禍を脱し本格的な再スタートを切るために練られた予算の内容を詳しく見ていくことにしよう。

 昨年12月に閣議決定した観光庁の24年度予算案は、今年度の1.6倍に相当する503億1800万円となった。この大幅増額の背景には、訪日旅行市場の急回復に伴う国際旅客税の税収増がある。観光庁はコロナ禍前の8割まで回復した市場の流れが24年度も続くと仮定し、国際旅客税の税収を440億円と想定。ここから、宮内庁が行う「三の丸尚蔵館および皇居東御苑大手休憩所の整備」に割く37億700万円を除いた402億9300万円を充てる。

 一般予算だけを見ると、23年度が109億7200万円であるのに対し、24年度は100億2500万円で9億4700万円の減少。しかし、国際観光旅客税財源が今年度の197億3100万円から402億9300万円へ200億円以上も増大したことで、全体で大幅増となった。

 24年度予算の約503億円を過去と単純比較すると、まだ19年度の約665億円、20年度の約680億円を大きく下回るが、21年度の約408億円は上回る規模となっている。

 ただし、国際観光旅客税を財源とする予算を差し引いて一般予算だけで比較すると、18年度約215億円、19年度約180億円、20年度約170億円、21年度約148億円、22年度約141億円、23年度約109億円、24年度約100億円と6年連続で減少している。

 なお、23年度補正予算の約689億円と当初予算を合わせるとその総額は約1192億円となる。補正予算では、地方誘客促進によるインバウンド拡大(約183億円)、訪日客の受け入れ環境緊急対策(約255億円)、オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進(50億円)を実施。22年度から取り組んできた、地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化(約200億円)も、複数年度にわたる予算の繰越制度を使って進めていく。

約9割が地方への訪日客誘致

 24年度当初予算の重点項目は、観光立国推進基本計画に沿って、「持続可能な観光地域づくり」「地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取り組み」「国内交流拡大」を3本柱とした。このうち手厚い予算措置が取られたのが、地方への誘客だ。3つの新規事業が投入され、23年度の78%増となる439億4600万円を計上。予算構成比でも全体の87%を占める大黒柱となっている。

 新規事業は、地域一体となったインクルーシブツーリズム促進事業(8000万円)、ストーリーでつなぐ地域のコンテンツの連携促進事業(2億5000万円)、地域一体型ガストロノミーツーリズム推進事業(2億円)。インクルーシブツーリズム促進事業では、訪日外国人旅行者の多様化に合わせ、各国の食習慣や文化的習慣に対応できる環境づくりに取り組む。例えばベジタリアンやビーガン、ハラールなどの食に対応したメニュー開発や、ムスリムのための礼拝所の整備などを進める。

 ストーリーでつなぐ地域連携促進事業は、23年度に実証事業として立ち上げたロングストーリー造成事業をベースに内容を強化したもの。ストーリーに基づいて巡る1週間以上の旅の周遊対象地域を広げ、長期滞在を実現するための実証を行う。また、「エクスペリエンスマネジャー」と称するスルーガイドを育成するために海外派遣プログラムも提供する計画だ。

 ガストロノミーツーリズムの推進では、外国人の需要が高い食に関するコンテンツ造成と地方誘客を促進するのが狙い。6地域程度を対象に調査と補助を行う。例えば、中央アルプスでジビエを楽しむコンテンツ提供などをイメージしている。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年2月12日号で】

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