ニュースで振り返る2023年 観光再始動で光明、新旧の課題も

2023.12.18 00:00

(C)iStock.com/Savany

おそらく観光産業に関わるほとんどの人が、この3年間、張りつめていた緊張の糸が緩むのを感じたのではないか。同時にこの産業が以前の姿に戻ることはないと、はっきり告げられたと感じたはずだ。そんな23年をニュースで振り返る。

 5月に世界保健機関(WHO)が「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を解除し、世界の観光産業が再始動へ向けて動き出した。それに続き日本政府も新型コロナウイルスの感染法上の位置づけを季節性インフルエンザ並みの5類に引き下げ、国際往来を妨げていた水際措置の完全撤廃に踏み切った。国境をまたぐ旅行を自由に楽しめる環境が3年ぶりに戻ってきたわけである。

 本誌が観光産業のキーパーソンに実施したアンケート調査で、編集部があらかじめ選定した23年の主な出来事の30項目の中から1位に選ばれたのは「コロナ5類移行で行動制限撤廃」(700点)だった。1位のスコアとしては20年「新型コロナ流行、全世界の観光業に打撃」の895点、21年「緊急事態宣言長引き、観光業界に打撃」の817点ほど突出していないものの、22年「水際対策ようやく緩和で訪日本格再開」の658点を上回った。

 驚くのは20年以降、コロナ禍に絡んだニュースが1位に選ば続けたれたことだ。1つの事象に関するニュースが4年連続で1位となった例は過去にない。観光産業に与えた影響の大きさと深刻さがいかほどであったかが分かる。

 行動制限撤廃は観光産業にとって大いに期待を抱かせるもの。「まさに観光再始動の1年だった。新たな観光立国推進基本計画の下、官も民も新たな市場分析と対応にチャレンジした。コロナ禍の3年が新しい価値観や市場環境、技術をもたらしたが、対応が遅れている。一方で、チャレンジを通じてヒントとなる光も見えてきているだろう」(ジャパンショッピングツーリズム協会・新津研一代表理事〔USPジャパン代表取締役社長〕)。不安は残しつつも、今後に希望を見いだすコメントが寄せらたのは当然だ。

 とはいえ、ランキング2位は「人手不足いっそう深刻、産業の課題露呈」(614点)。コロナ禍の収束の先にも手放しでは喜べない状況が待っていたのも事実だ。「特にコロナ禍で体制の縮小を余儀なくされた観光業が人流の回復という大きな外的環境の変化に直面した時、システムや設備面での対応は可能でも、人という要素は簡単に代替できないことが明確になった。このことは、今後の(観光だけでなく)産業界のあり方全体を考えるうえでも1つの教訓になったかもしれない」(エクスポート・ジャパン・高岡謙二代表取締役CEO)とのコメントがそれを象徴している。

入り交じる期待と不安

 人手不足等のアフターコロナに山積する課題は多くの関係者が実感しているところだ。「明るい兆しが見られる一方で、地域の観光関連事業者は物価上昇による収益圧迫や、人手不足による防衛的賃上げ・需要の取りこぼし等の課題に直面している」(日本商工会議所・宮澤伸地域振興部長)、「コロナ禍を経て旅行市場が様変わりするだろうと予想はしていたが、人手不足やDX化の急速な進展、旅行代金の高騰、団体から個人への旅行形態の変化など、旅行会社への風当たりは予想以上にきつく、戸惑っている」(読売旅行・坂元隆代表取締役会長)。ほかにも労働力の逼迫に関するコメントが多数寄せられた。

 3位「訪日旅行、急回復で2500万人へ」(506点)と4位「円安続き、訪日消費を押し上げ」(427点)は観光産業的にはうれしいニュースではあるものの、いずれも円安効果が需要回復の原動力。そう考えると、円安が逆に需要回復の足かせとなる海外旅行ビジネスの苦境にも目が行ってしまう。8位の「海外旅行復活へ官も旗揚げ、回復6割」(219点)が気になるところだ。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年12月18・25日号で】

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