岐路に立つロ-カル鉄道 三位一体の改革なるか

2022.10.10 00:00

(C)iStock.com/zhangyang135769

日本全国の多くの地域でローカル鉄道が存廃の岐路に立たされている。何もせず手をこまねいていれば消滅への軌道をひた走ることになるが、ここで再生に向けて切り換えを図れば、何とかまだ間に合うという分岐点だ。鉄道開業150年の節目の年に鉄道事業者、地域、国それぞれの対応が強く求められている。

 ローカル鉄道の現状はどのようなものなのか。国土交通省がまとめたJR6社の利用状況を見ると、輸送密度(1㎞当たり1日平均利用者)が2000人未満の路線の割合は、国鉄から民営化してJRが発足した1987年度は営業キロベースで15%だったが、2019年度には31%に拡大。さらにコロナ禍が始まった20年度には39%まで増加している。輸送密度2000人は、大量輸送機関としての鉄道の特性が十分に発揮できるぎりぎりのラインとされ、これを下回ると鉄道事業者の経営努力だけではサービスの維持が困難になると考えられている。実際にこれまで輸送密度2000人未満の80路線以上で第三セクターによる鉄道輸送やバス輸送への転換が図られている。

 JR東日本は今年7月、輸送密度2000人未満の線区の経営情報を初めて開示したが、該当する35路線66区間のすべてが19年度に赤字で、最も赤字額の大きい羽越本線の村上/鶴岡区間の場合、年間赤字額は約49億円だった。同様の情報開示を行ったJR西日本も、17路線30区間のすべてが赤字で、山陰線の出雲市/増田区間の赤字額は35億円を上回っている。

赤字線区抱える余力が消失

 ローカル鉄道の窮状はコロナ禍によって深刻さを増している。それも2つの方向からローカル鉄道を追い込む形でだ。1つは直接的な収益に対する打撃だ。近年の観光列車ブームで収益を向上させたり、インバウンド需要の恩恵を少なからず受けたりしていたローカル鉄道が、コロナ禍で国内旅行需要とインバウンド需要の両方を失い、一気に収支を悪化させることになった。またもう1つ、コロナ禍の影響として深刻なのは、鉄道会社全体の経営が傾いた結果、ローカル線の赤字を他の黒字路線や沿線ビジネスの収益で支えるというそれまでの経営手法が通用しなくなってしまったことだ。

 地域公共交通総合研究所が鉄道、バス、旅客船の主要500社に20年4~9月の経営実態調査を実施したところ、鉄道会社の68%で売上高が30~50%減少。20年9月の状態で補助・支援がない場合、1年以内に経営維持に支障を来すと思われる鉄道会社は61%に上る。コロナ禍での損失が「回復不能」とする回答は、バス18%、旅客船12%に対し、鉄道会社では40%と倍以上になっている。同研究所は、「地域公共交通のコロナ禍という災害による損害は甚大で、国内全体の公共交通を維持するには危機的な状況であり、対策は待ったなしの状況」と分析している。

 また、国交省のとりまとめによると、JR・大手民間鉄道の20年度決算は連結最終損益が全社で赤字となり、その合計額は約1.5兆円にも達している。JR各社や大手民鉄はこれまで、新幹線や都市部路線の生み出す収益や好立地を生かした不動産事業等により、赤字のローカル鉄道を抱えていても会社全体としては収益を上げており、コロナ禍前まではJR北海道とJR四国以外は黒字を確保していた。ところが20年度は全社が赤字に転落した。もともと地方部でしか事業を展開していないローカル鉄道に関しては、コロナ禍前でも78%が赤字という厳しい状況だったが、20年度は赤字会社の割合が98%とさらに事態は悪化した。

提言に記された厳しい指摘

 こうしたローカル鉄道の危機的状況は地域の公共交通システムの崩壊につながりかねない。それだけに、各自治体も危機感を募らせ、21年8月には国土交通大臣に「地方の鉄道ネットワークを守る緊急提言」が提出され、23道県知事が提言者に名を連ねた。提言の内容は、鉄道利用促進のための機運醸成、鉄道事業者の経営基盤の安定化への支援、鉄道事業法における鉄道廃止等手続きの見直しの3つが柱となっている。

【続きは週刊トラベルジャーナル22年10月10日号で】

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