観光産業へようこそ コロナ下に贈る新入社員への言葉

2021.05.03 00:00

(C)iStock.com/blackred

コロナによる未曽有の危機を迎えた観光業界が新入社員を迎えた。採用数が絞り込まれるなかで困難を承知で観光産業への仲間入りを果たした若人たち。珠玉の原石たちともいえる彼らに観光産業のリーダーたちからのメッセージを届けよう。

 昨年のいまごろはすでにコロナ禍が始まっていたが、入社式の中止などはあったものの、足元の採用活動に大きな影響はなかった。翌年の採用見通しこそ不透明だったが、当時は観光業界がいま直面する深刻な状況は予想されていなかった。

 トラベルジャーナルでは観光産業の主要企業を対象に採用状況を尋ねるアンケートを実施、21年4月の採用状況と22年4月の採用計画について、20社(旅行8社、航空3社、鉄道4社、ホテル5社)から回答を得た。それによると20社中18社が今年4月の新入社員数が前年より減少したと回答。1社が前年並み、1社が非公表だった。減少した18社のうち採用人数が半数以下だったのが12社に及び、5分の1以下が5社、10分の1以下も3社、ゼロ採用も1社あった。

 業種別に見ると、旅行の8社中6社は採用人数が半減以下。ホテルも厳しく5社中4社が半減以下に。鉄道は採用の絶対人数が大きいこともあり減少率は小さく最大でも3割減にとどまっている。

 各社にとって今年の採用削減が苦渋の決断だったことは想像に難くない。エイチ・アイ・エス(HIS)は「コロナ禍で選考を中断し、その後再開できなかった。すでに内定を通知していた学生には内定取り消しを行わず入社してもらった」としている。一方で「採用を控える企業も多い影響で例年よりレベルの高い人材採用ができた」(旅行会社)や「説明会が開催できないなど苦戦したが、観光業界が採用を減らしたこともあり、結果的に必要な母集団は確保した」(アパホテル)など、今年の状況を前向きに捉えるコメントもあった。

 長期化するコロナ禍は22年4月の採用計画にも影を落としている。20社中5社が採用中止を決めており、採用数を減らす企業が7社、未定とする企業も4社あり、採用増との回答は1社だけだった。採用中止を決めた5社はいずれも旅行会社で旅行業種への影響の大きさが目立つ。日本旅行は「旅行需要消滅により22年新卒採用を見送ることにしたが、この業界を目指していた学生には大変申し訳ない」と苦しい胸の内を明かす。

 その一方で「他業種の採用活動が停滞しているため例年より多くの応募がある。景気回復の際に希望の業界を再度目指したいとの理由で離職者が増えるのを防ぐため、選考において志望度や業界・企業研究をしっかり精査し優秀な人材を確保したい」(プリンスホテル)との声もあった。

 コロナ禍は採用活動の手法の変化も促した。多くの企業が採用活動にオンラインの手法を取り入れたとしている。コロナ禍によって強いられた手法の変化だっただけに、今年の採用は試行錯誤したようだ。東武トップツアーズは「ウェブと対面のハイブリッド型面接を行うことにし、採用を続けることができた。ウェブでの面接は効率よく行えるメリットがあるが、同時に傾聴力や反応を見ることの難しさも感じた」と振り返る。

 また、オンラインの欠点を補うため「双方向のコミュニケーションが取れるようにウェブでの説明会はライブ配信で行った」(ホテル)や「できる限り社風や社員の雰囲気等が伝わるよう、多人数セミナー、少人数座談会など複数の形式でオンラインセミナーを開催し、ユーチューブを用いた会社説明や社員座談会の動画配信など工夫を凝らしている」(JR東日本)といった試みが挙げられた。

 今後については「ウェブ形式での採用活動は、地方学生への活動機会提供や効率的な活動という点でも効果を生んでいるため、コロナ収束後も一定程度継続する」(日本航空)や、「学生との接点についてはオンライン、リアル、ハイブリッドなど効果的な手法を適時選択していく必要がある」(旅行会社)、「コロナが終息してもオンラインを通じた採用活動にはメリットがあるため、リアルとオンライン両面のメリットを組み合わせた工夫を続けたい」(旅行会社)といった意見があった。

【続きは週刊トラベルジャーナル21年5月3日号で】

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