OTAに迫るグーグルの脅威

2020.02.03 00:00

 グーグルの旅行市場で増大する支配力がOTAを苦しめている。それは10年以上前から始まっていることだが、近年はグーグルワンのホテル割引、ホテルプラスフライトによるパッケージ提供などでOTAの地盤は徐々に侵食されている。特にこれからアンドロイドやGメールによるモバイル利用者への拡大は、OTAだけでなく業界全体に影響が大きい。また、モバイル上でプライスインサイトというおすすめ予約時期や競合ホテル比較などのサービス提供も始めている。

 検索の巨人は自社の旅行サービス広告を検索トップに置いて露出を著しく強化した。サプライヤーとフリーリンクのグーグル広告が優越すれば、消費者の検索はグーグルに留まる確率が高まり、検索結果においてOTAの認知度は低下する。消費者は検索で他のサイトに向かう前にグーグルをクリックする。年齢が高いほど1カ所で予約する確率が高まるとされるが、オンライン取引すべてを吸い取りかねない勢いがある。アナリストによると、これからグーグルワン利用者に対するホテル割引拡大が進み、さらに朝食サービスなどアップグレードまで検討されているという。

 しかし、エクスペディア、トリップアドバイザー、ブッキング・ドットコムのOTA大手はグーグルで広告費を増やさざるを得ない。グーグルがライバルになってもOTAは顧客として広告費を増やすのは皮肉なことだ。グーグルがオンライン検索市場の75%以上を支配するので、他の選択肢は少ない。英フィナンシャルタイムズによれば、昨年9月に第4四半期のエクスペディアの宣伝費は11%増えて16億ドルになったが、大部分はグーグル広告費だ。結果、利益は10%減少した。

 ブッキング・ドットコムも毎4半期にグーグルに支払う広告費は10億ドルを超える。上記OTA3社は業績発表後の株価急落で、市場価値は合計13億ドル減少したとされる。エクスペディアは14年間で最大の下落、トリップアドバイザーは2年ぶりだ。OTA各社はブランドマーケティング強化などでグーグルへの過度の依存を変える必要性を感じているが、苦境から逃れるのは簡単ではない。急速に成長してきたエクスペディアさえ近年の伸びは1桁に鈍化しており、アナリストによると実績は15年の民泊予約ホームアウェイ買収が支えている状況だ。このほかエアビーアンドビーなど代替宿泊施設の攻勢を受けており、経営方針を巡る対立で同社のCEOとCFOが昨年9月に辞任した。

 グーグルは一挙に旅行分野全体を押さえるのでなく、徐々に拡大する戦略を採用しライバルの顧客たちに与える刺激を避けてきた。しかしグーグルの旅行事業への進出意向は否定できないようにみえる。ホテル市場ではレビューを含めトリップアドバイザーに追いついていないが、航空券の取り扱いではカヤックやメタサーチに対しコンバージョンでも凌駕している。

 やがて米国や欧州で独占的なプラットフォームに対する規制が強化されるかもしれないが、グーグルの脅威が早急に解消するとは予想できない。旅行業界の多くの会議で、主要OTA経営者はグーグルの独占的地位が消費者の行動を変え市場を歪めると激しく非難している。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。