リクルート、地域の観光DXに着手 自社データ開放、2自治体とモデル検証

2021.12.13 00:00

連携協定を結んだ富士吉田市の堀内茂市長(右)とリクルートの宮本賢一郎旅行ディビジョン長

 リクルートは地域の観光消費拡大を支援するため、自治体と協働でデジタル技術とデータを活用した消費増加モデルの確立に取り組む。旅行予約サイトのじゃらんnetや会計支援サービスで得た各種データを提供し、観光客の消費動向を詳細に可視化して戦略の策定につなげる。山梨県富士吉田市と包括連携協定を締結したのに続き、新潟県妙高市とも相次ぎ協定を結んだ。さまざまな形で地域振興に携わってきたが、観光DX(デジタルトランスフォーメーション)に乗り出すのは初めて。

 鍵となるのがリクルートが保持するデータだ。一般的に自治体は入込客数と平均単価から算出する大まかな消費額の把握にとどまる。一方、じゃらんnetの情報は宿泊や体験、口コミなど幅広い。キャッシュレス決済のAir ペイなどの会計データも用いれば多角的に分析できる。これらを利用者個人が特定できない形で自治体に提供する。

 同社が宿泊等のデータを開放するのは初。4月の中核事業会社・機能会社の統合を機に、従来のメディア事業での集客支援に加え、業務支援サービスを広く活用することで社会課題解決を目指している。観光DXはその一環。地域事業者のキャッシュレス化などデジタル消費基盤の強化と併せて行う。

 同事業に携わるじゃらんリサーチセンターの木島達也研究員は「コロナ禍が長引き地域経済は弱っている。消費拡大が求められ、評価指標のベースとなるデータ整備は不可欠」とする。富士吉田市ではすでにAirペイを100台以上導入済み。事業者の業務変革も目指す。

 現時点ではあくまで研究事業の位置づけで、「提携先は増えてもあと1自治体程度」(木島研究員)の見通し。22年夏に成果を発表し、今後の観光DXの礎とする。

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