JTB、異業種にらみ初任給引き上げ シニア社員には賞与 人材流出に歯止め

2024.01.22 00:00

 JTBは今年4月に入社する新入社員の初任給を一律で3万2000円引き上げる賃金制度の見直しを行う。大卒以上の総合職が対象。現行では、21万円に地域に応じ手当を加味して支給している。首都圏1都3県の場合、23万円から26万2000円に上昇する。航空や鉄道業界の主要企業を上回る水準。新卒採用市場での競争力を強化し、人材の定着と安定を図る。

 意識するのは、採用数の多い都市銀行など異業種企業だ。観光産業はコロナ禍で人材流出が顕著となり、将来性への懸念から選ばれにくくなっている。引き上げで「ある程度戦えるレベルになる」(渡辺健治常務執行役員)。

 観光産業の賃上げムードは昨年から高まっており、全日空は大卒総合職の初任給を昨春から2万円増の23万8557円に引き上げた。鉄道では小田急電鉄が23万6600円に改定した。JTB はさらに高い水準を目指し、観光産業をリードしていきたい考え。

 初任給の引き上げに加え、4年としていた初期育成期間を2年に短縮する。同期間中は成果に応じた賃金を支給していない。若手社員のキャリア形成意識の高まりを捉え、育成期間を終えた入社3年目の成果を翌年の給与に反映し、支給を早める。新卒の初任給引き上げに伴い2年目以降の若手社員の給与を上回ることがないよう、既存社員の給与も底上げする方針だ。

 また、60歳以上の社員には、年2回の賞与を支給し、年収を現行より約24%引き上げる。65歳までの高年齢者雇用確保措置の継続雇用制度に基づき再雇用した60歳以上のシニア社員は約4%を占めるが、28年度には約13%に高まる見通し。高度な専門性を持つ社員の流出を防ぎ、モチベーションを維持する。

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