旅行大手の談合に憤怒とため息 不正相次ぎ、観光庁「対策議論できない状況」

2023.11.27 00:00

JTBは11月17日の決算会見の冒頭、山北栄二郎代表取締役社長(中央)が「心よりお詫び申し上げる」と謝罪

 旅行会社が自治体から受託する事業でまたも不正が発覚した。青森市の新型コロナ患者移送業務に関し、大手5社が独占禁止法に違反した疑いがあるとして、公正取引委員会は11月15日、各社の青森支店に立ち入り検査を行った。10月には名鉄観光サービスによる雇用調整助成金の不正受給も明らかになった。観光庁は再発防止策の議論を進めようとしているさなかだったが、議論に至らない状況に憤りとため息が聞こえてくる。

 談合の疑いがあるのは、青森市が22年度に5回行ったコロナ患者移送業務の指名競争入札。市の入札結果を見ると、JTBと日本旅行東北も入札に参加していたが、すべて近畿日本ツーリスト(KNT)青森支店が落札していた。

 関係者によると、KNT、JTB、日本旅行東北、東武トップツアーズ、名鉄観光が事前に協議し、KNTが他の4社に業務を再委託する形で利益を分け合ったと見られている。今後、関係者への事情聴取などが行われる見通し。

 観光庁の髙橋一郎長官は同日の定例会見で「極めて遺憾だ」と語気を強めた。各社に事実関係を確認中で、厳正に対処する。観光庁は5月、KNTと日本旅行によるワクチン接種関連業務の過大請求事案を受け、JATA(日本旅行業協会)に全会員の受託事業の総点検を指示。その報告を踏まえて対策を議論することとしていた。しかし、不正が次々発生し、報告書がまとまっていない。

 折しも10月の訪日外客数がコロナ禍前を上回り、髙橋長官は「苦しい時を耐えてよくぞ踏ん張っていただいた」と観光産業に敬意を示した。しかし、絶えない旅行会社の不正に「国民の信頼を取り戻すために何をなすべきか、真剣に議論していきたい」と気を引き締めた。

【あわせて読みたい】旅行業界とコンプライアンス なぜ不正は後を絶たないのか