米ホテルのオフ期料金に変化

2022.04.11 00:00

 日本でもパンデミックでワーケーション、ホテルの長期滞在などが話題になったが、米国ではリゾート地の宿泊料金に影響が出ている。稼働率が下がるオフ期は宿泊料金も下がるのが通例だが、パンデミックによる消費行動の変化でオフ期に割安な旅行を計画する価格志向の旅行者を失望させているとニューヨークタイムズなどが伝えている。

 夏季に人気のミシガン湖畔のホテルで昨年5月の休暇を過ごそうと思った旅行者が3カ月前に問い合わせたところ、例年容易に予約できるにもかかわらず、すでに夏の間は満室となっていた。驚いてあちこちの別荘を探した結果、古い小さな山小屋で休暇を過ごす羽目になり、オフ期に変化が起きていると認識せざるをえなかったという。米国の国立公園周辺のホテルでも、例年ならオフ期のところが高稼働で高い料金となっていたため、いつもどおりお得な旅行先と信じていた旅行者を困惑させている。

 原因の1つはリモートワークの定着である。通勤から解放された人たちがリゾートに押しかけたため宿泊料金の上昇を招いた。

 OTAの調査によると、20年の米国人旅行者の58%がコロナによるリスクを回避するためオフ期に旅行するようになり、21年にはその傾向がさらに高まった。価格が高騰した場所を避けるため旅行者の7割近くが旅行先を変更しているという。また、21年の需要の多くが観光主導というデータもある。ワクチンを接種した多くの人が政府の景気刺激策で旅行に行く気になったとみられる。

 宿泊料金に影響を与える要因は季節性に限らない。人手不足に伴う利用可能客室数の減少、従業員給与をはじめ、物価インフレ等の室料への反映もあるが、客室稼働率の上昇が大きな要因だろう。

 米国の旅行者はコロナ禍を避け安全な海岸、山岳地帯、田舎町などを目指した。コロラド州アスペンでは20年7月の稼働率が88%に達し、通常オフ期の9月でさえ稼働率69%と前年から20ポイント増加した。ワイオミング州ジャクソンでは通常は閑散期の宿泊者がパンデミック前のほぼ2倍になった。22年のショルダー期も、フロリダ、ハワイ、人気のある国立公園などでホテル需要が2桁増加する可能性があるという。こうした稼働率上昇がオフ期料金を押し上げたようだ。

 旅行者の自衛手段の1つは平日旅行だ。平均料金が最も低い月曜は最も高い金曜に比べ約15%安い。旅行先として割安になった大都市滞在を考えるのも手だ。シカゴではここ2年で宿泊料金が20%近く安くなった。アトランタ、サンディエゴ、サンフランシスコなどでも22年1~2月には19年より安い料金が見られる。人気リゾート地でも、夏が繁忙期のバミューダでは冬に最大半額セールを行っているなどお得な時期は探せばある。 

 米国ホテルのオフ期は縮小しているものの消えたわけではない。今後、コロナ前の状態に戻るのは無理にしてもビジネスやグループ旅行の回復でオフ期が戻る可能性はある。政府の景気刺激策も通常のオン・オフ料金に影響を与えるだろう。オミクロン株亜種など旅行の先行き予測は難しいものの、知恵を絞ればお得な旅行はまだできそうだ。コロナ禍で苦戦中の日本の宿泊業者にとって米国の状況はうらやましく見えるかもしれない。

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