ポストコロナへの人材確保

2022.03.14 00:00

 欧米ではオミクロン株の特性が見えてきて、感染者数が増えても重症者や死者数はワクチンの効果もあってそれほど増えず、医療崩壊は避けられそうだという意見が強い。すでに外国旅行も含めた需要回復が始まり、多くの旅行会社がコロナ以前を超える問い合わせを受けるようになっている。

 一方で最近の報道によれば20年に米国では旅行会社の中心業務を担うトラベルアドバイザー(コンサルタント)の62%がレイオフされたり退職を余儀なくされたりした。さらに300の旅行会社へのヒアリングでは35%がコロナ以前のレベルのアドバイザーが確保できていないとしながら、実際に人材確保に動いているのは3割に満たないと報じられている。また、大半の会社が他社で人材募集しているという話も聞いていない。結果、残っているアドバイザーはオーバーワークとなり顧客の求めるサービスが提供できないという問題が起きている。

 コロナの影響による需要消滅が最大の直接的原因だが、将来への不安が大きく影響していると調査対象となった旅行会社の多くの責任者が語っている。さらなるロックダウンや新たな変異株の発生など不安の種は尽きない。資金面の問題も雇用に影響している。20年の米国の旅行会社の事業収入は前年比75%減。旅行会社の98%が米国法上の中小企業に該当し、政府による事業継続のための金融支援システムの援助を受け、米国旅行業協会(ASTA)は国の支援なしでは21年に旅行会社の80%以上が存続できなくなるとしている。

 社会全体で人手不足が深刻化するなか、アドバイザーの数が不足し旅行再開を検討する顧客候補が旅行会社に相談しようとしても適切な対応が得られない。このためコロナ前の方法であるオンラインサイトで予約せざるを得なくなることが多い。ところが旅行の計画を立て必要な手配をするハードルが特に外国旅行の場合非常に高くなっている。

 ビザの取得、ワクチン接種や検査証明書入手、旅行先により異なる認可ワクチンや隔離処置など、さまざまな要素を自分で集め判断し決断するのが大変すぎて結局旅行をあきらめるということが起きている。調査された旅行会社の7割近くが有能なスタッフを確保できないことがサービスの低下を引き起こし売り上げ回復を妨げている。当然スタッフを早く雇うと財務面で問題が生じ、遅れると回復する需要を逃すという難しい状況である。

 世界的な趨勢がウィズコロナに向かうことは間違いなさそうだが、単純に人々が動き出しコロナ以前と同じツーリズム需要が、そしてツーリズム産業が再生するとは限らない。世界各地であるべきツーリズムの姿を探す活動が進んでいる。最近の良い例では国際標準化機構(ISO)が昨年秋に業務性旅行に関わるリスク管理のためのガイドライン(ISO31030)を発表している。

 日本ではツーリズム関連の政府補助金が旅行会社により不正に受給されたケースが大きく報じられるなど、ツーリズム産業の回復にネガティブに作用する事件も発生している。今後産業全体が回復に向かいだすと人手不足が強まる恐れが高い。安定的に成長を続けてきたツーリズム産業の意外なもろさがコロナで露呈したことも踏まえ、今後の人材確保には周到な準備が求められる。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。

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