小池百合子都知事が語った2020東京オリパラへの取り組み
2019.02.04 08:00
いよいよ来年に迫った東京オリンピック・パラリンピック競技大会。前回のオリンピック・パラリンピックから56年ぶりに日本に夏季大会がやってくる。その開催都市の首長を務める小池百合子知事が準備の最新状況について語った。
7月24日の東京オリンピック開会式まであと561日となりました(※講演した1月10日時点)。9月にはラグビー・ワールドカップ(W杯)も開催を控えており、メガイベントが続きます。また今年は天皇陛下のご譲位とご即位、新元号スタートの節目の年でもあります。
私は、かつてエジプトに留学し、アルバイトでガイドの仕事に携わった経験があります。旅行・観光産業の一員だったわけです。いま東京都知事としてオリンピックを迎えるに当たり、産業面あるいはお客さまの気持ちをくみ取るという両面で、かつての経験も役立てていきたいと考えています。
エジプトでは、カイロを中心にルクソールやアスワン、アブシンベル神殿などでガイドを務めました。厳密には通訳としての仕事でしたが、どうご案内するのが最適なのか、日本人旅行者のニーズに合わせて工夫したつもりです。
エジプト人ガイドは日本人旅行者について、「まず写真ありきだ」と語っていたことを思い出します。一方、ドイツ人は「ナイル川はどちらの方向に流れているか」など、写真を撮るより現地の様子を微に入り細に入り尋ねてくるのだと言っていました。また年端もいかない子供たちが、英国人には英語、フランス人にはフランス語で、何カ国語も使って物売りをするのです。そのたくましさが印象的でした。日本人も学ぶべきバイタリティーだと感心したものです。こうした観光現場での経験をオリンピック・パラリンピックに生かしていけたらと考えています。
外国人の観光消費を2倍以上に
最近ではインバウンドが突然のように増えだし、人口減少で縮小傾向にある経済を補うかのように、多くの外国人旅行者が日本滞在中に消費しています。また、日本人が気付かなかった観光スポットに光を当て、いまや聖地になっているポイントもあります。観光はまさに経済の牽引役です。東京都でも2017年の観光消費の経済波及効果は11兆円に上り、うち2兆円が外国人旅行者によるものでした。
森記念財団都市戦略研究所が調査した世界の都市競争力ランキングで東京は3年連続で3位に入っています。米国の富裕層向け旅行雑誌「コンデナストトラベラー」の読者投票では3年連続で東京が1位を獲得。東京の評価が確立されてきたと感じています。一方、世界の都市間競争は激しさを増し他都市の猛追を受けていますが、この競争に勝ち残り持続的な成長を果たすことは、日本の首都として堂々たる位置を占めていくために重要な要素です。
今年9月には東京都調布市にある味の素スタジアムで行われるラグビーの日本対ロシア戦でW杯が開幕し、東京では8試合が行われます。ここから東京オリンピック・パラリンピックにつながるこの好機に、東京都は観光面でも大きな成長を期待しています。17年に1377万人となった訪都外国人旅行者を、20年に2500万人とする目標を掲げました。また、訪都外国人旅行者の消費額については、17年の1兆1357億円を20年に2兆7000億円まで拡大することを目標としています。
バリアフリー化がポイント
東京都ではラグビーW杯、東京オリンピック・パラリンピックと続くメガイベントの開催を機に、ユニバーサルデザインを普及させていきます。20年東京大会のポイントはバリアフリーです。特にパラリンピック開催に際しての課題を克服することでバリアフリー社会の実現につなげていきたいと考えています。
東京でさえ人口減少社会、超高齢社会に向かう時代が近づいています。その時、バリアフリーによって誰もが安心して生活できる東京でありたい。前回の東京大会はオリンピックとパラリンピックが一緒に開催された最初の大会でした。つまり、東京は史上初めて、夏季オリンピック・パラリンピックの2回目の開催都市となります。
東京都では現在、都道のバリアフリー化、エレベーターや鉄道駅のバリアフリー化、トイレの洋式化を進めています。また言葉のバリアフリー化も意識し、案内表示やサイネージ、都のポータルサイト等の多言語化に取り組んでいます。宿泊施設のバリアフリー化に関しては全国に先駆け建築物バリアフリー条例を改正し、新しい客室の整備基準をつくります。さらにバリアフリー化のための補助も拡充していく方針で、宿泊事業者のためのセミナーも開催していきます。
観光ボランティアの確保にも力を入れており、そろいのユニフォームを着た観光ボランティアが上野、浅草、銀座など都内各所で活躍しています。20年の東京オリンピック・パラリンピック開催時に都市ボランティアの皆さんの活躍も期待されています。
安全面では国や組織委員会と協力して体制をつくり、リスクを洗い出して対処していきます。西日本豪雨や北海道胆振東部地震の教訓を受けて、災害時の外国人旅行者のための多言語対応にも力を入れます。復興オリンピック・パラリンピックとして東日本大震災の被災地域に対するフラッグツアーやメディアツアーを行い、聖火リレーも予定しています。大会のメダリストは5000人に及びますが、授与する金・銀・銅メダルの材料は使わなくなった携帯電話等から取り出して再利用します。
観光施策も進めています。東京のアイコンとなった渋谷のスクランブル交差点をモチーフにしたロゴも作りました。桜や紅葉、建造物等のライトアップも進め、プロジェクトマッピングにも取り組みます。
MICE誘致にも力を入れています。都の庭園や建築物を国際会議のためのユニークベニューとして活用する準備も進め、パンフレット等の資料も作成しました。そのほか多摩地区や島しょ部などの自然の魅力をアピールする動画も用意しています。
東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、旅行業界の皆さまのお力も借りながら、首都東京の観光の魅力を一段と高めていきたいと思います。
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