観光危機管理計画、まだ15都道府県 手引き作成も進まず 部署間連携に難しさ

2024.03.11 00:00

 災害が観光客や観光産業にもたらす影響を想定し、自治体が減災対策や避難誘導策などを講じる観光危機管理計画の策定が進んでいない。観光庁の調べによると、都道府県レベルで策定済みは3月時点で15都道府県どまり。能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県は含まれていない。背景には、異なる部署間の連携の難しさがあるという。

 すでに策定しているのは、北海道、東京都、大阪府、沖縄県など。一方、東日本大震災を経験した東北地方は秋田県のみ。23年の宿泊者数が1000万人泊以上の自治体でも、京都府や千葉県などはまだだ。これに対し、取り組みが早かった沖縄県は、那覇や糸満など市単位でも策定しており、自治体によって開きがある。

 防災計画の中で観光客を含む帰宅困難者対策などを盛り込んでいる自治体はあるが、観光危機管理計画では、平常時の減災、備え、発生時への対応、終息後の復興の各フェーズで必要な措置をまとめる。日本はもともと自然災害が多いうえ、近年の度重なる災害や新型コロナの影響で重要性は高まっており、観光庁は22年3月に手引きを作成した。だが以降、新たに策定した自治体は出てきていない。「災害対応の部署と観光部署の連携が難しく、予算の措置ができていないことが要因に挙げられる」(観光庁外客受入参事官室)

 認識や機運を高めてもらおうと、観光庁は3月7日に初の観光危機管理シンポジウムを開催。23年度補正予算のインバウンド安全・安心対策推進事業では500万円を上限に支援し、24年度も引き続き予定する。「自治体に必要と思ってもらうことが大事。今回の能登半島地震もあり、認識が高まれば」(同)と話している。