ジェイアール東日本企画の高橋敦司常務が語る「自ら変革するひがし北海道の観光」

2024.03.11 00:00

ひがし北海道自然美への道DMOが12月に開催した着地型観光のシンポジウムで、ジェイアール東日本企画常務取締役チーフ・デジタル・オフィサーの高橋敦司氏が登壇した。「自ら変革するひがし北海道の観光」をテーマに、コロナによる観光の変化とひがし北海道のブランド構築について語った。

 3年続いたコロナ禍も収まり人が来るようになって、10月の訪日外客数は19年同月を超えました。世間的には戻ったといわれますが、戻ったのではなく、コロナ禍で地域格差がむしろ加速しました。これから消えてしまう地域が出て、地域間でパイを取り合う戦いになると思います。観光の潮目が完全に変わりました。

 いままで旅行のビジネスは、経験と勘と思い込みに成功体験があれば大体うまくいっていたのですがすべて陳腐化しました。15年くらい前に一番人口が多かった団塊世代であるアクティブシニアは70歳以上の後期高齢者となり、5年もたてば旅行しなくなります。一方、これから旅行するのは次の世代。インバウンドも18年の統計で20~30代が60%を超えています。

 日本政府観光局(JNTO)バンコク事務所の調査ではリピーターが増えたため有名でないスポットの情報が求められるようになりました。タイ人のフェイスブックの人気投稿上位5つも19年はすべて有名地の風景でしたが、21年には知られていない景色、日本ならではの体験やアクティビティーに変わりました。

 そして、北海道にはやっかいなことに、若者が車に乗らなくなりました。レンタカーとカーシェアの認知度が9割を超える一方、今後レンタカー使ってみたいという若者は8.9%ほどです。レンタカー前提の旅行者は8.9%しかいないことになります。旅先選びもSNSでの検索になりました。15年時点の調査でも、何かを知りたい、どこかへ行きたい、何か買いたい、すべてスマートフォンで調べます。

 グーグルの画像検索してみると、ローマ字のSatsuma(薩摩)は、米国でみかんのことを指すため、みかんしか出てこない。出雲(Izumo)で出るのは軍艦の画像、長野県の飯山(Iiyama)ではパソコンしか出ません。秋田(Akita)は犬ばかり出るのですが、秋田県はこれを逆手にとり、この5年間プロモーションのキーを秋田犬に変えました。それによって犬を入り口に秋田には他に何があるのか調べられ、検索と拡散を繰り返し、秋田のブランドがつくられました。

 Hokkaidoとローマ字で検索すると美瑛などのイメージが少し出てきます。日本語で北海道を検索すると地図しか出てこない。検索画像の種類がたくさんあるために北海道という一般的な言葉に地図以上に強力なアイコンがないということです。East Hokkaidoで出るのはほぼひがし北海道が発信するコンテンツですが、訪れた人による美しい風景はほとんど出てこない。

 ひがし北海道のウイークポイントは、まさに北海道であるために北海道という普遍的な名前に引っ張られてしまうこと。北海道は寿司のおいしいランキング1位で、北海道中にラーメンがあるといったおおまかな北海道観と、ひがし北海道という磨き上げたブランドがミックスされることで薄められ、価値を落としてしまっています。

 ハワイではオアフ島に行ったら次は離島のマウイ島やハワイ島に、沖縄の那覇に行ったら、次は石垣島や宮古島に行こうとなります。海を隔てた別の島だからです。しかし札幌に行ったら、もう北海道は行ったからとなってしまう。北海道という言葉でひがし北海道の唯一無二の価値が薄められてしまうのです。

 札幌と一緒に売るのか、札幌に関係なくこの地で育まれた価値をここだけのものとして売っていくかは交通体系をどう組み合わせるかという戦略にもつながります。阿寒湖温泉のマリモ、カーリングのロコ・ソラーレの顔出しパネル、ストーブ列車、厚岸ウイスキーなどここにしかない価値を組み合わせて地域のブランドをつくる必要があります。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年3月11日号で】

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