旅行者の交通費を自治体が負担 常識破りのビジネスモデルで目指す観光革命

2024.02.12 00:00

永瀬社長。社名に「四方よし」の意味を込めた

 旅行をする際の高いハードルとなっている交通費を実質無料にして観光を活性化できないか――。そんな発想の下、人の移動で恩恵を受ける側が旅行者に替わって交通費を負担する試みが動き出している。仕掛けるのは、Fourwin(フォーウィン)の永瀬駿平代表取締役社長。北海道島牧村で行う実証実験では、一定の効果が見えてきた。

 同社のアプリ「フリートラフィック」を使い、目的地までの移動距離から交通費を算出し、還元ポイントを弾く。旅行者は、位置情報の検知、対象ホテル・店での利用が条件となり、アプリに予約・支払い額を記録するとポイントが付与される流れ。ポイントは泊数に応じて増え、島牧村では1泊6000円を上限に7泊すれば最大4万2000円分が無料になる。現金に換えることができ、往復航空券代に充てることが可能だ。

 この原資を自治体が負担する。永瀬社長は「多くの人が恩恵を受けるのに、たった1人の旅行者が交通費をすべて負担するのはおかしいのではないか」と考え、旅行に行きやすくなり、受け入れ側もリスクなく集客できる仕組みづくりに至った。自治体からは「先例がない」と言われ、賛同を得るのに苦労するが、営業担当者が地域おこし協力隊として関係を築いていた島牧村が応じた。

 昨年9月からの実証実験では、参加者15人が滞在中に使った額は交通費を除き1人1泊平均1万7277円、計約32万円。直接経済効果は自治体が投じた額の4.6倍に相当する。数字以上に事業者の反応は大きい。閑散期に予約が入ったことも喜ばれ、「仕組みに賛同を得られた」(永瀬社長)。

 今後、実証実験を重ね、機能向上を図ったうえで商業化を目指す。国内外のDMOなどに提案したい考えで、世界の観光革命を描いている。

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