日旅の不正請求、体面重視が一因 新たな不正確認されず 変わらずBPO事業推進

2023.07.10 00:00

不正請求について謝罪した舘常務(左)と吉田圭吾取締役

 「コンソーシアムの中で当社の運営能力の低さを問われたくないという意識があった」。日本旅行は6月29日、愛知県の全国旅行支援の事務局運営で人件費を不正請求していた問題の調査結果を公表し、舘真代表取締役常務は要因をこう述べた。調査で新たな不正は確認されなかったが、体面を重視し不正行為を正当化する誤った防衛意識が背景にあったとし、教育研修や組織風土改革を推進する。7月1日付でガバナンス推進部を設置し、管理も強化する。

 日旅は10~15人を事務局に拠出し、うち2人は社員で残りを外部派遣会社に委託して業務運営に当たっていた。しかし、派遣会社から体調不良などで欠員の連絡を受けるたび、勤務表に社員の名前を記載しつつ、実際には業務に従事していなかった。

 不正請求の564万円を返金・減額し、同事業から6月9日付で離脱したほか、業務委託料のうち営業管理費の受け取りを辞退した。不正に関与した社員6人を懲戒処分とし、社長と常務の2人が報酬の一部を自主返上する。

 愛知県版の全国旅行支援では、県と観光協会がJTBに事務局業務を委託。JTBが日本旅行、近畿日本ツーリスト、東武トップツアーズ、名鉄観光サービスの4社でつくるコンソーシアムに再委託している。こうした形態に問題はないのか。舘常務は「事業規模の大きさから1社で受けるのは難しい」として、特に問題はないとの認識を示した。

 日旅は25年度までの中期経営計画で、自治体からの受託事業を含むソリューション事業に軸足を置き、売上総利益の約7割まで拡大する方針を掲げている。現在、不正請求の影響はなく、「公的事業を拡大する計画は変わらない」(舘常務)としている。

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