空港業務、賃上げや契約見直しへ 人手不足対策で国交省案 やりがい搾取の改善指摘

2023.06.12 00:00

負荷軽減につながる先進技術の導入も求められる

 空港で働く地上職の人手不足が深刻化するなか、空港業務のあり方を検討してきた国土交通省の有識者会議は6月1日、中間とりまとめ案を公表し、グランドハンドリング会社が航空会社から収受する受託料の引き上げを盛り込んだ。旅客数が急激に回復する一方で、人手不足が空港での混雑を生み、増便計画にも影響を及ぼしている。「やりがいの搾取を続けているような現状は一刻も早く改善すべき」とし、今年の秋ごろまでに措置を求めた。

 5月時点で国内線はコロナ禍前の約9割、国際線は約6割まで旅客数が回復した。一方でグラハンや保安検査の要員は約2割減少している。ただ人手不足は以前から懸念されていた。類似業界に比べ賃金水準が低く、休憩室が整っていないなど、若者が敬遠する労働環境に起因する。そこにコロナ禍で採用抑制や脆弱な業界という負のイメージが加わり、離職者が急増した。

 解決策として、賃上げの原資となる受託料改定に加え、業務のキャンセル料の設定など契約内容の適正化も求めた。現状では外国航空会社が就航をキャンセルした場合など、需要変動に伴うリスクをグラハン会社が負っている。

 空港を管理する自治体にも支援のあり方の見直しを求めた。外航の誘致を積極的に行っている自治体は多いが、就航が決まった後の対応はグラハン会社任せになっているケースがあるという。空港業務の支援も誘致の一部と位置付け、措置を講じるべきとした。

 長期的な施策では人材のマルチタスク化を挙げた。現状では、ランプや旅客など部門間の人材の融通が限定的で、急激な需要変動に対応できていない。航空会社によってシステムや手順が異なることも足かせで、業界ルールの見直しも必要と指摘した。