國學院大の小林裕和教授が語る着地型観光とデジタル化への道

2024.01.29 00:00

ひがし北海道自然美への道DMOが12月に「ひがし北海道における着地型観光の方向性」をテーマに開催したシンポジウムに國學院大學観光まちづくり学部の小林裕和教授が基調講演に登壇。道東地区における着地型観光とデジタル化について語った。

 着地型観光という言葉はもともと旅行会社を中心とした力学から、地域が主体となって観光を盛り上げていこうという流れから生まれました。しかし、地域の主体とは具体的に誰なのかという議論が十分にされないまま、従来型の旅行会社主導ではないという意味で使われたり、またまちづくりの意味を含んで使用されたりしています。今回、観光は地域が主体という大きな流れにおいて、ひがし北海道がビジョン実現に向け進んでいくための話をします。

 ひがし北海道は世界でも珍しい希少な資源が揃っていることは間違いありません。しかし、グローバル市場を見据えた時、世界の誰もが目指すデスティネーションになっているのか。なっていないとしたら何が必要なのか。例えばドイツのロマンチック街道は約500~600kmに広がり、同じ縮尺で北海道の地図に合わせると、ちょうど北から南の釧路に重なります。ロマンチック街道には中世の町並みが残され、多くの見どころがありますが、ひがし北海道には一級の資源はある一方で、世界中の旅行者が来て楽しいと思える「商品」がどれくらいあるでしょう。

 そういった視点から、着地型観光とデジタル化の実現に向け、その方向性の1つが着地型観光の進化系です。広い領域を持つひがし北海道地域は、これまでに積極的に移動手段を整備されてきましたが、その交通ネットワークを分かりやすく提示するだけでも価値あるものになるはずです。

 トリップアドバイザーのトップ画面で、ホテルの隣に並ぶのは「Things to Do」、何をすべきかというカテゴリーです。以前、欧州で訪日旅行事業の責任者を務めた経験から、日本で何が見られるかではなく、何ができるのかをよく聞かれました。

 この「Things to Do」は私たちが思っている以上に重要な視点です。網走に行って何ができるのか、知床を訪れたら何ができるのか、答えをいくつ持っているでしょうか。一般的に旅ナカの3要素とはツアー、アクティビティー、入場施設・アトラクションで、「Things to Do」のカテゴリーにリストアップされるものです。美術館・博物館などの入場施設、流氷を楽しむようなアクティビティー、また、特にひがし北海道では交通網を考えるとバスツアーは大事です。

 同じような気候のアイスランドとフィンランドの事例を紹介します。アイスランドは北海道とほぼ同じ面積でレイキャビクは世界で最も北にある首都といわれますが、アイスランドを楽しむためのさまざまな着地型ツアーがあります。ゲットユアガイドという体験型商品を販売するOTAでアクティビティー商品を検索すると、アイスランドは450件出てきます。一方、北海道は60件です。

 例えばロンドンの旅行者が直接日本の体験事業者とやりとりをすることは効率が悪いです。こういったウェブサイトから予約してもらうことが大事です。北海道の4倍の面積があるフィンランドでは、政府観光局のサイトのトップページの一番上にアクティビティーへのリンクがあり、そこで何ができるかがキーワードになっています。アクティビティーが紹介されるだけでなく、ネットで販売予約できる状態であることがポイントです。

 これらの事例を参考に考えると、サービスを提供するサプライヤー、地域を取りまとめる地域DMOや観光協会、さらに地域連携DMOがそれぞれ連携しながら進めていくことが重要です。統一したテーマによるブランディング展開やデジタルの力を使って一気通貫で情報が整理されていることが求められます。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年1月29日号で】

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