GoTo不正受給、ミキツーとJHATが組織的計画 HIS澤田会長「本体は一切関与なし」

2021.12.25 12:00

12月24日に都内で開いた記者会見の冒頭、頭を下げる役員

 エイチ・アイ・エス(HIS)は12月24日、子会社2社のGoToトラベル事業をめぐる不正受給疑いに関し、ミキ・ツーリストとジャパンホリデートラベルで宿泊の実態のない取引があったと認めた。不正受給額は最大で6.8億円。いずれもHIS元社長の平林朗氏が代表を務めるホテル運営会社、JHAT(ジェイハット)との取引によるもの。HIS本体の関与は確認されなかった。同日会見した澤田秀雄代表取締役会長兼社長は「子会社の管理不行き届きで大変申し訳なく思っている」とする一方、「HIS本体は不正に一切関与していない」と強調した。

 不当に受給していた額はミキが4080万円、ジャパンホリデートラベルが最大で約6億4249万円。額は後者が圧倒的に大きいが、不正の中身はそれぞれ性質が異なる。

 ミキの場合、JHATの運営するホテルの客室20室60泊分を1室当たり1泊6万8000円、計8160万円でミキが買い取る契約を20年10月に締結。自社で消化することとし、宿泊者名簿に役員と従業員80人の名を記していたが、延べ4800泊のうち実際に宿泊がなされたのは114泊だった。役職員を除くミキの従業員60人に対しては名前記載の同意も得ていなかった。不正に受給した4080万円は給付金を申請したJHATに支払われている。

 調査委によると、ミキはこの背景について、もともと東京五輪のために買取契約をしたホテルのキャンセルにかかる義務の履行と説明している。だが同時期に、ミキの海外拠点でJHATの宿泊商品の販促活動を行う協賛契約を結び、いまだ実施に至っていないことから、客室買取契約でミキからJHATに支払われた金が協賛契約によって還流されたものと推測した。

 一方、ジャパンホリデートラベルは、JHATから団体顧客として法人4社を紹介され、同社運営ホテルでの長期の研修付き受注型企画旅行を提案されて応諾した。顧客数は述べ5万5053人、販売額は1人1泊4万円。だが、GoToトラベル事務局が実施した参加者向けアンケートで、本人が知らない、宿泊していないとの回答が相当数に上り、不正が明るみに出た。調査委はGoToの給付を申請するための実態のない契約と認定した。ただ、JHATが仕入れ額や研修業務委託料の取り決めを行い、ジャパンホリデートラベルは取引に関する主体的な協議や関与をしていないという。

 調査委の荒竹純一委員長(さくら共同法律事務所弁護士)は、「ミキはJHATと共謀したことが各種資料から判断できる。両者が不正のスキームをつくり上げたという印象。一方、ジャパンホリデートラベルは不正の意図は認められない。売り上げが落ち込むなか、いい話に乗っかった印象で、極めて軽率」と説明した。

澤田会長「むかついている」

 HISは今後内容を精査して不正に受け取った給付金の返還を進める。GoToトラベル事業は早ければ来年1月下旬にも再開されるが、子会社2社の参加は辞退する。一方、HIS本体については「希望としては参加させていただきたい」(中森達也取締役専務執行役員)との意向を示した。

会見で記者の質問に答える澤田会長兼社長(中央)

 子会社2社の扱いについては、ミキの檀原徹典代表取締役社長を早ければ年内に解任し、HISから新たに社長を送り込む。ジャパンホリデートラベルについても厳しく処分を検討するとし、同社役員を兼務するHIS本体の役員についても多少の処分を検討するという。

 子会社を管掌する織田正幸取締役常務執行役員が事態を把握したのは、ミキ社内での不正に関するメールのやりとりや報道が出てからで、澤田会長の耳に届いたのは12月初旬だった。澤田会長は「ガバナンスが少し甘かった」と述べ、子会社の管理やコンプライアンスを強化する方針を示した。ただ一方で、「HIS本体はなんら不正に関与していない」と繰り返し強調。今回の問題への率直な受け止めを問われると、「むかついている。なんでそんなことをしたのか」と平林氏への憤りをあらわにした。

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