『派遣添乗員ヘトヘト日記』 あるある話を同業者目線で満喫
2020.04.13 00:00
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ドラマや小説の世界で添乗員やバスガイドは人気の設定である。移動が多く観光地も登場させられるので、物語を動かすには都合がいいんだろう。
だが、実際にはどうか……皆さんご存じのとおりである。「ワンランク上の」系旅行以外は早朝から深夜まで拘束時間は長く、ギャラは安く、体力気力フルで使わないと務まらない。好きじゃないと続かない仕事の典型だろう。なんでこんなに言い切るかというと、以前からの読者はご存じだろうが、私が旅行会社出身で、ライターになってからも現場に触れたくて派遣会社に登録し、たまに国内添乗に出ていたから。最初は派遣添乗員業界のジョーシキが飲み込めず、目を白黒させたっけなあ。
本書を読んで、その当時の戸惑いをいろいろ思い出していた。本作は、とある派遣会社に所属する添乗員がつづったお仕事エッセイ。50歳を過ぎてから添乗員を始めた、というと珍しい感じがするが、この業界ではよくある。旅好きな中高年がちょっとした転機に飛び込んできやすい仕事なのだ。だが現実は厳しい。
新幹線の席割りが娘と離れていたことで「こんな侮辱、生まれて初めてよ」と文句を言う女性。渋滞で紅葉もイルミネーションも見られず大クレームになったツアー。ガイドの手際の悪さから吊し上げを食う羽目になったツアー。無愛想なバスドライバー、道を間違うドライバー、派遣添乗員には態度が大きい旅行会社社員……。あるあるー。
超覚えのあるトピックが満載。せちがらいわあ、って話が多いが、それでも続けられるのは、やっぱり魅力がある仕事なんだと思う。少なくとも私にとってはそうだった。現役添乗員さんが読めば、伏字になってる会社名もすぐわかりそうな、リアルなお仕事本だ。
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山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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