ランド事業から攻める、FIT時代の海旅ビジネスの活路に
2019.03.18 08:00
JTBとミキ・ツーリストが相次いで現地集合・現地解散型の周遊観光バス事業を欧州で展開する。これに加え、地上(ランド)手配企業に大手旅行会社が出資する動きが加速。これまで海外旅行ビジネスの肝は航空券仕入れだったが、ランド事業に熱い視線が注がれ始めている。
周遊観光バスは、JTBが昨年11月21日に「ランドクルーズ」の名称で計画を発表すると、その約1カ月後にはミキ・ツーリストが「ジョイバス」を日本市場に投入すると発表した。JTBは日本人旅行者を対象としているのに対し、ミキ・ツーリストはアジアからの旅行者との混載型という違いはあるものの、基本的に宿泊付きの周遊観光バスである点は共通項。ミキ・ツーリストはすでに韓国などアジア市場で先行して販売しているが、日本人向けにはJTBと同じ4月から開始する。また、JTBも将来的には日本人旅行者以外に市場を広げる意向を明らかにしており、ヨーロッパ旅行市場をめぐり、周遊観光バス事業の真っ向勝負が始まると捉えることもできる。
もともとヨーロッパの地上手配が主力のツアーオペレーターで現地発着ツアー「みゅう」も手掛けてきたミキ・ツーリストにとって、ジョイ・バスはその延長線上にあるものだ。しかし、日本発着の航空券と現地ホテルなどをセットにしたパッケージツアー「ルックJTB」を個人向け海外旅行ビジネスの柱に位置づけてきたJTBにとって、航空券と切り離したランドのみの事業に本格参入することは大きな路線変更。自らも「欧州旅革命」をうたっている。
革命を促した要因として、JTBは2つの点を挙げる。1つはパッケージ離れが進み急速にFIT化する旅行者の変化であり、もう1つは、訪日旅行の急増や世界的な旅行需要の増大で、パッケージツアーの前提となる航空券やホテル客室の確保のハードルが上がっていることだ。航空会社のイールド重視戦略でレジャー座席、特にパッケージツアー用運賃の供給は絞られている。パッケージツアーが最少催行人員に満たない場合のホテル客室の返却やデポジットの損失リスク、現地におけるバス運行のコストも旅行会社を圧迫する。こうした状況から解放される現地発着ツアーや周遊バス事業は、旅行会社にとって新たな活路ともいえる魅力がある。
と同時に、旅行会社離れが進むマーケットを再び引き戻す有効な手立てでもある。旅行者のFIT志向に反して個人で自由旅行を難なく楽しめる移動インフラは十分に整っておらず、特にヨーロッパ方面では旅行者のニーズと旅行環境にギャップが生じている。このギャップを埋めることがビジネスチャンスにつながるとの判断も、新たな事業モデルへの挑戦を後押しした。
オペレーター囲い込みも加速
旅行会社によるランド強化の流れは、世界的な旅行需要の高まりにより、ホテルをはじめとする地上手配の需給バランスが変化した2010年代に入ってから目立っている。特に顕著なのが、地上手配のノウハウや資源を有するツアーオペレーターの囲い込みだ。
JTBは、欧州でシート・イン・コーチ(SIC)と呼ばれるビジネスモデルで成功し、今回のランドクルーズにノウハウを提供しているスペイン大手旅行会社ヨーロッパムンド・バケーションズの株式40%を14年に取得。その後、出資比率を70%まで引き上げて子会社化した。また17年には、ヨーロッパの大手インバウンド・ツアーオペレーターのクオニイ・グローバル・トラベル・サービスを買収し、ヨーロッパにおける受け入れ事業の拡大とオペレーション強化に取り組んでいる。JTBはこの際にも、買収後の主な事業展開として「日本市場向け現地発商品の拡充によるFIT対応強化」を挙げている。
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