NDCがもたらす地殻変動 航空券流通が新局面へ
2018.05.07 08:00
国際航空券の販売に変革が起きている。IATA(国際航空運送協会)が推進する新流通規格(New Distribution Capability=NDC)がじわり普及し始めているためだ。消費者主導という側面も併せ持つこの変革は、売り手に販売戦略と決断を迫っている。
IATAが主導してきた国際航空券に関わる大きな変革といえば、ある時点を境に形態が一変した完全Eチケット化や公認代理店に多大な財務的インパクトを与えた債務保証の導入などが記憶に新しい。しかし、NDCはそのどれとも性質を異にする。
「Eチケットを例に取れば、航空会社が効率化と利便性の向上を目指したもので、消費者が最初から望んでいたかは疑問だ。しかし、NDCは消費者が望む航空プロダクトを望む方法で買えるようにする流通環境の構築が目的。ようやく航空会社がマーケットに追い着いてきた」。推進派の中心軸にいるルフトハンザ・グループのドナルド・ブンケンブルク日本・韓国支社長は説明する。
NDCは、航空会社が自社ウェブサイトで販売するのと同様の全コンテンツをリアルタイムに旅行会社など外部の販売チャネルで見せるためのXMLベースのデータ交換規格だ。いまや消費者はアマゾンで書籍から食料品、車まで購入でき、自宅はもとよりコンビニでの受け取りも可能だ。検索時はビジュアル情報で細部が手に取るようにわかる。しかし、航空券はそうした現代の購買に即した形になっていない。規格が長年見直されて来ず、情報の表示方法が限られる。また、航空会社が運賃登録機関に外販用の運賃を登録し、それをGDSが空席情報などと合わせて旅行会社に提供する仕組みで、航空会社サイトと多少のタイムラグがあるほか、購入者の属性や嗜好にかかわらず基本的に一律だ。GDSに多大な使用料を払いながら、最安値比較によるコモディティー化を招いているというのが航空会社側の認識だ。付加価値の訴求と収益性の向上が求められている。
NDCでは、旅行会社が航空会社に直接リクエストする仕組みに切り替わる。方法はAPIによるシステム接続と専用サイトへのアクセスの2つに大別される。システム接続型では、①アグリゲーターを介した接続と、②航空会社と旅行会社のシステムを直接つなぐ「ダイレクトコネクト」がある。①はアグリゲーターにリクエストすると条件に見合う複数の航空会社の提案内容が示され、その中から選んでオーダーする仕組み。マイレージ情報などと紐付けた提案が可能だ。接続先はアグリゲーターとなり、航空各社と個別に接続する必要はない。②はシステム開発が必要になるが、販売面でより優位性のある運賃などが扱える。対する専用サイト型は、ITプロバイダーが開発したサイトで手配する。システム面での負担はないが、旅行会社のシステムに情報を再入力する必要がある。
いずれを選択しても、旅行会社はあらかじめ航空会社とコンテンツ契約を結ぶ必要が生じる。どの航空会社をどう売るかという戦略が求められそうだ。
GDSより3日早い販売に反響
すでに海外の旅行会社がNDCで販売しているルフトハンザを例に取ると、GDS上では販売していないラウンジ利用のバウチャーや食事のアラカルトメニューの事前予約などの取り扱いが可能で、ダイレクトコネクトではさらにこうした有料サービスの割引や割引運賃のプリセールを行っている。プリセールはGDSより3日早い販売が可能で、展開した香港では「取り扱えない旅行会社から問い合わせなどかなりの反響があった」(販売企画推進部・村上敏弘セールスプロダクト&プログラムエキスパート)。ブンケンブルク支社長は、「出張で空になった冷蔵庫に補充する食料品のデリバリーなど、創意工夫をしていきたい」と今後の展望を語る。
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